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カテゴリー「1999年の読書遍歴」の94件の記事

2008/11/16

『ないしょないしょ 剣客商売番外編』 (池波正太郎) 感想

「このことはないしょ、ないしょ」だぞ。仕えていた剣客が殺され、それを機に江戸に出てきたお福は、次に仕えた御家人から偶然にも手裏剣の手ほどきを受けることになったのだが、そのときにこう言われるのであった。
運命に翻弄される女性の半生を描いた、読み応えのある長編。人というのは長くかかわってみないと判らない生き物なのだな、ということを感じずにはいられない物語。その最期の時に「今度こそは、迷惑をかけずにすみます」の<迷惑>の意味の深さを考えこんでしまう。はたして、秋山小兵衛はじめ、お福にかかわった人々が、それを迷惑だなどとちらりとでも考えただろうか?(1999/12/19)

『剣客商売16 浮沈』(池波正太郎) 感想

シリーズ最終巻。読了して何とも奇妙な思いに囚われた。とりわけ後半部だが、妙に駆け足なような感じがするのだ。これは、ほんとうはもっと長い話になるはずだったのだろうか?さらに奇妙なことには、大治郎の登場はほとんどなく、また三冬もそうである。この最終巻はだから基本的に小兵衛だけの物語なのだ。さまざまの登場人物たちの定命についての記述が散見され、田沼意次の政治的命運についてが暗示される。そしてラストの数ページでは何とも唐突にそれまでの物語から7年の月日が流れ去ったことが明かされ、その日の小兵衛が描かれる。その「躰も一まわり、小さくなっていた」という描写に、ぼくは、いいようのない寂しさを感じてしまうのだ。この『浮沈』を書きおえて作者は世を去ったと解説にある。(1999/12/19)

『グイン・サーガ69 修羅』 (栗本薫)

なるほど、グインの戴冠は次巻『豹頭王の誕生』になるわけですね。このたびは例の件によってイシュトヴァーンがモンゴールの法廷に引き出される……と。まあ、ストーリーのほうはやっぱりそうきたか、という展開だけど、アムネリスってよほどほんとに男運がないのだねえ。なんだか、彼女がこの物語のなかではいちばんふつうっぽいのにな。
それはともあれ、この巻の題名についてあとがきにて作者の云々。いや、ぼくとしては最初の頃に出てきたウマという動物についてのくどくどしい説明よりは納得しやすいですよ。ああいうふうに説明されると冷めるのだなあ。だから、どちらかというと、ぼくの場合は言葉遣いにひっかかっていたのは最初の10冊くらいですね。これがグインの文体だ、と納得して読めばよいのではないでしょうか?あんまり違和感のありすぎるものは困りますけどね。(1999/12/19)

『黒い家』 (貴志裕介) 感想

いまさらのようですが、話題作です。例の事件とよく似ているというのでとても有名になったようですね。しかし、ここに登場する黒い家の住人たちというのはいったい何なんでしょう?こんな連中がほんとうにいるのか、という問いかけはもはや陳腐なのでしょうか?それに保険というのは、この物語を読むとよほど人間というものの善意に支えられているおめでたいもののように読めてしまうのですが、これもほんとうのところどうなのでしょうか?作者はもと生保会社に勤務した経験があるとのことで、ここに描写されているデータの数々も微に入り細を穿ったものが多く、うなってしまいます。うなっている間にこの物語の質量に押しつぶされてしまいそうになります。やっぱり人間がいちばん怖いなどと書くと陳腐なのでしょうが、黒い家の住人たちは人間ではないのでしょうか?これは物語なのですから、人間ではないとされた彼らがとても怖い、と書いておけばいいのでしょうか?読後に背中を流れていったひどく冷たい汗はいったい何なのでしょう?(1999/12/12)

『アルスラーン戦記10 妖雲群行』(田中芳樹) 感想

7年ぶりの新刊です。細かな人間関係をかなり忘れてしまっているのですが、それでも読み始めると物語のなかに魅き込まれてしまうのは、やはり田中芳樹の筆の力なのでしょう。パルスの王都はすでにアルスラーンによって奪還されていますので、興味は蛇王ザッハークやら銀仮面ヒルメスの動向にあるのですが、前者の色が強くなればますますファンタジー的になっていくのでしょうが、やはりぼくとしてはもう少し政治がらみの話を読みたいと思います。次の巻はいったいいつ出版されることになるのでしょうか?今度はあまり時をおかずに読みたいものです。(1999/12/14)

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『剣客商売15 二十番斬り』(池波正太郎) 感想

小兵衛が妙に気弱なのが前巻気になったのだけれど、ついには体調に変化が……。しかしながら、ごくふつうの人間に比べるとまだまだその超人ぶりは健在のようです。なにしろ二十番斬りですからね。12巻の表題が「十番斬り」でしたが、あの時に十人を倒したのと比べてみると、単に量的な変化ではないことが明かですね。剣というもので到達しえた境地、それは小兵衛の剣が質的にも変化していることを示しているのですね。最終巻がはたしてどういう収束を見せるのか、とても気になります。(1999/12/12)

『剣客商売14 暗殺者』(池波正太郎) 感想

この長編の冒頭から登場する波川周蔵という剣客は、仕掛人ということでしょうね。この仕掛けがどういう方向にいくかというのが物語の主軸ではあるのですが、友人を失った小兵衛が妙に気弱になっているのも、このシリーズとしてはめずらしいことで興味をひかれます。表題の「暗殺者」はもちろん波川のことであり、どうやらその標的は大治郎らしいのですが、いったい何のために?というところが眼目です。波川が自分をとりまくいくつもの事情にだんだんにがんじがらめになっていくところが、なんとも哀しい物語でした。(1999/12/12)

『木曜組曲』(恩田陸) 感想

あちこちの書評系ページに書いてあるのとぼくも同じ感想をまずは述べましょう。恩田陸のハードカヴァーを2冊も連続して読めるなんて、こんな贅沢なことが許されてよいのでしょうか……。堪能させていただきましたよ。
物語は耽美派の作家である時子の死をめぐって、5人の女性がそれを偲ぶために集会するという設定ですが、よいですねえ。作家の死の真相よりも、物語の各所でさまざまに角度を変えて語られる物語を書くというのはどういうことか、という話題がぼくにとってはいちばん興味深かったです。ミステリの読み方としては邪道なのですが、恩田氏がどういう姿勢でものを書いているのかというところに、つい想像がいってしまいます。物書きとはかくも業の深きものなり……。(1999/12/12)

『象と耳鳴り』 (恩田陸) 感想

『六番目の小夜子』の登場人物である関根多佳雄を主人公とした連作短編集。美しい謎が呈示されると、それらはほんとうは解き明かされることを望んでいないのではないかと思うのはいつものことですが、この作品集にはとりわけそれを強く感じました。人食い給水塔の謎に対していくつかの解決案が示され、しかもあのラストというのはとてもよい感じの「給水塔」。表題作「象と耳鳴り」、象を見ると耳鳴りがするというのは、まるで風が吹くと桶屋がもうかると言われているようで不可思議な感じですが、なるほど、象をあそこに関連づけるのは非凡な連想です。「ニューメキシコの月」、たった一枚の写真からその人となりを想像するというのはこの編のなかにもひかれているようにティの『時の娘』が有名でありますが、ここではしかも風景写真なのですね。最後のページはとりわけ感慨深いものがあります。「廃園」はこのなかではもっとも幻想的に感じました。見捨てられた庭というのはかくも不可思議な閉鎖空間をかたちづくるものなのですね。(1999/12/05)

『ウルフガイDNA 5 マフィア狩り』 (平井和正) 感想

「西城恵登場か!?」と帯にあるのだ。人美の危機を救った男の風体はたしかに西城にそっくりだけれど、なんかキャラクターがちがうぞ。男はライノと名乗っているのだけれど、これって『犬神明』のなかで西城の使っていた偽名だったか……?うーむ、これはもう一度先行作品を読み返してみる必要があるかも。ともあれ、この男が西城だとすると、あれから何十年かは経過しているわけだね。西城も不死身ウイルスの影響を受けているはずだから、下手すると何百年かな……。とにかく、確率的にこのシリーズが<ウルフガイ>の正当な続編である可能性はとても高いわけだな。となると、やはり気になるのは、シリーズ主人公の犬神明(メイじゃなくてね)はいったいどうしたのかということなのだが……。(1999/12/05)

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