『ハリー・ポッターと賢者の石』 (J・K・ローリング) 感想
世界3600万部の大ベストセラーだそうである。膨大すぎてちょっとピンと来ない数字であるが、奥付に初版第410刷と入っていて驚く。もちろん日本語版だけでの数字。いやいや、長い間本を読むのを趣味にしてきたけど、かつてお目にかかったことのない数字ですね。
まあ、これだけ流行し、映画化もされると世の中にはいろんな人がいらっしゃるもので、<魔女を賛美するような内容は宗教的見地から好ましくない>をはじめとして毀誉褒貶の激しいことだ。まあ、例にひいたような<批判>は、そもそも物語というものを枉げて理解しようとしているわけで笑止ですがね。
第1巻読了時点でのぼくの感想はというと、少々ひねくれているかもしれません。あえて誤解をおそれずに言えば、いかにも読書を趣味とする人間が喜びそうだなあ、というもの。どういう意味かって?つまり一種の貴公子流離譚なところなんだけどね、悲惨な生活を送っている自分はじつは高貴な身分の出身で、その力を是とする異世界ではヒーローである、と。まるで、腕力に欠ける人間がやたら超能力みたいなものに興味を示すのに似ていません?ファンタジイなんだからそれでよいのかもしれないのだけれど、いつもいつもやっぱり釈然としないのだよね。序章あたりで叔父一家にいじめられ尽くしていたハリーが、どうして何の屈折もなく寮生活の中心人物になったりするわけ?シンデレラとかと同じ納得のいかなさだな、人間ってそんなに簡単に価値転換できるもの?それともそれこそが高貴さの証?すべてが血筋とかにかかっていると言われているようで、どうもね。ここでぼくが思い出すのは『風の海 迷宮の岸』の泰麒だったりする。こちらは、そこまで悩まなくてもいいじゃないかと思うけれど、まだ彼のほうがぼくには理解しやすい。あちらのほうがふつうの反応じゃないの、と考えるのはぼくも屈折した人間だからかな?
あと、物語の随所にマグル=普通の人間を一段低く見るような描写が垣間見えることも気になるな。しかもハリー自身がそれに多少とも染まっていくようにも感じられる。特にラストの一言などは、ジョークとしてもいただけない。まあ、でも、この魔法族と一般の人間の関係が巻を追うにつれてどう変化していくのかは見どころのひとつかもしれません。といったところで、この物語でいちばん気に入ったところを示すのであれば<敵に立ち向かっていくのにも大いなる勇気がいる。しかし、味方の友人に立ち向かっていくのにも同じくらい勇気が必要じゃ>というところ。ラスト近くですね。なんでもない、ごくふつうの、でもなかなか出せない勇気。そういったものが評価されていることはすばらしいです。
さて、なんだかぐちゃぐちゃ書いたあとに言うのもなんですが、たいへん面白く読めたのは事実です。しばらく間をおいてから2巻を読んでみてもよいかもしれないな、と思いました。


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