『グイン・サーガ87 ヤーンの時の時』 (栗本薫) 感想
ついにこの時を迎えてしまったのだな、と思ったのはきっとシリーズ読者のすべてであろう。合掌。他の誰がシリーズよりいなくなるよりも、存在の喪失を感じてしまう。そう、思えば人として何と満たされない人生を彼は歩まされたのか。いや、なまじ人としての望みをあまり持たない彼であるがゆえに、これこそがつまるところ満ち足りた人生であったのか?古代機械の謎、ただそれをグインに伝えるためだけにヤーンに定められたこれは宿命だったのだろうか?彼のきらびやかではあったにせよ薄倖な年月が、ただただこの一日の会見のためにあったのだとすると、それこそが真実いちばん強い彼の願いであったにせよ、やはり人の子としては同情を禁じえない。ついに弟とわかりあうこともなく、最愛の妻に手を触れることもなく世を去らねばならないとは……。しかし、この別離こそがもっとも彼に相ふさわしいもの。ここにヤーンの時は満ち、すべての世俗の悩みより解き放たれたる彼に、黄泉路にての幸いこそをと祈らずにはいられない。(2002/12)


最近のコメント