『さんだらぼっち 髪結い伊三次捕物余話』 (宇江佐 真理) 感想
さんだらぼっち 髪結い伊三次捕物余話 宇江佐 真理 文藝春秋 2005-02 【Amazon】 |
【感想】
髪結い伊三次捕物余話シリーズ第4弾。
・「鬼の通る道」
前作『さらば深川』のラストがああだったので、そのあとの展開がどうなるのかはあれこれ考えたわけだけれど、なるほどストレートには繋がらないのだな。またも不破家がらみで進行する話自体は面白いのだが、終始伊三次の視点で進むのでお文の気持ちが窺い知れず、ちょっと不満。というか、これではお文がごくふつうの女房になってしまったようで、面白くないじゃないか。
・「爪紅」
『リップスティック』という古い映画があったよなあ、と思いながら読んだのである。どうもこういうのは苦手である。伊三次が古い馴染みと再開を果たしているが、これが後にどう影響してくるのかが楽しみですね。
・「さんだらぼっち」
表題作。おもわず唸ってしまう。起こる事件も事件なら、それがふたりの生活に及ぼす影響も甚大であるのに、これが捕物の仕事とはいささかも関係なく進むという凝りに凝った展開。前二編とは違って、ずっとお文の視点。「自分の居場所」か。考えさせるよなあ。
・「ほがらほがらと照る陽射し」
そして、前編の真相を伊三次が知るのはここまで引っ張るという凝った仕掛け。しかも情報源は同心の不破ではなく…。こうしてみると、独立した短編でありながら、この1巻でひつつの長編の仕立てになっているのですよね。
・「時雨てよ」
前半の展開を読んでいて、どうしてこれが「時雨てよ」となるのか不安に苛まれる。好事魔多し、ということか。何から何までうまくいくとは限らない。そして人と人は、思いと思いは、どうしようもなくすれ違うものなのだよなあ。
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