くつだけが帰ってくる
『モモちゃんとアカネちゃん』という本をご存知だろうか?モモちゃんシリーズの第3巻にあたる物語であるが、これがなかなかに怖いのである。中でも強烈な印象があったのが、<くつだけのパパ>だ。詳細はおぼえていないのだが、モモちゃんのママとパパはうまくいかなくなる。ある日を境にパパはくつだけが帰ってくるようになるのだ。くつにごはんを食べさせることはできないし、お風呂にいれることもできないとママは悩む。
くつだけが帰ってくるというのはどういう状況なのか?帰ってくるものの心はここにないということか?理由がなんであれ、家の外の何かに心をとらわれている状態なのだろう。子供の頃に読んだ時はただただ無気味だった。
最近、仕事が忙しくてまともに家に帰ることも難しくなっているのだが、そんなときに思い出されてならないのが、この<くつだけのパパ>なのだ。着替えたり、財布の中身を補充したり、そういう理由がなくては家に帰らないというのは、まさにこの状態ではないのだろうか?
「忙しくて家に帰れないならホテルに泊まってはどうか?」と会社で言われたりする。しかし、ビジネスホテルの部屋のあの窒息しそうな感じがどうにも好きではない。出張でもない限りはごめんこうむる。泊まったあとで、余分な経費だと上司に愚痴られるのも勘弁だ。それになにより、帰ることができない前提で仕事をしたくはない。
会社泊まりこみで深夜の2時3時まで仕事をし、事務椅子を並べて仮眠する。そんな生活がもう二ヶ月以上も続いている。何日か前、椅子の下に脱いだ革靴が、ぼくを置いて帰っていく夢にうなされた。このままだと、ほんとうに靴はぼくに逆らってひとりで帰ってしまうようになるかもしれない。(2007/4/10)
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