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2008/11/30

『あやし -怪- 』 (宮部みゆき) 感想

ミステリと怪奇ものの最大の差は、後者は必ずしも謎解きを必要としないということである。とにかく、事象を語るだけで怖い……といってしまうと、前者より書くのが簡単なように聞こえてしまうか?……いや、そうではなく、謎を解かずに読む者に何かを感じさせるほうが、もしかするとよりずっと難しいのかもしれない、などとぼくは思うのだが……。
「居眠り心中」どうしてこのようなことが起こったのか、銀次にはきっと一生わからないであろう。それでよいのである。得心のいく説明は何ひとつないままに語り終えられるこの話、でもなにか納得いくでしょう?「銀次は居眠りしない」「一人前の男になって」……うーむ、深い。
「梅の雨降る」哀しい話ですね。これなど、現代でも起こりそうな話に思えて、いっそう怖い。やはり鬼のようなものはいるのかもしれない……。
「安達家の鬼」そう思っていたら、この編では<いる>と断言されてしまったような気分。はてさて、しかし、これもいったい何者なのか?「人として生きてみて、初めて”鬼”が見える」のであれば、やはり鬼は人の一部なのでしょうか?
「蜆塚」何度もあちこちで書いたけど、異形のものよりもこういうのがぼくは苦手というか怖いのである。しかも、この編の連中は「何も悪さをするわけじゃない」からぼくはよけいに怖く感じてしまう。異形と通い合わないのは仕方ないとして、人の形をしたものとたとえば悪意にせよ通わないとなると……。
(2000.08.27)

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