『虚無回廊III』 (小松左京) 感想
「伝説のSF巨編ここに再開」という文句が帯に書いてあります。伝説になってしまわなくてほんとうによかったというのがまずは第一の感想。しかし、この3巻に収録されているのは「SFアドベンチャー」に連載されていたものの残り部分ですから、正確にはぼくにとっては再読なわけです。だから、まだほんとうに再開されたのだという実感がないのですね。再開の噂はこれまでも何度かあったわけで、まあ気を長くして待ちましょうか、というのがほんとうのところ。
さて、かんじんの中身ですが、10年近く前にこの作品が書かれていたというのはほんとうに驚きです。SFというのはその性質上、時間を経ると古びて見えるものなのですが、そういうこともあまり感じませんでした。昨今コンピュータに限らず技術の進展はめざましいものがあるのですが、ここまで巨視的にやられてしまうと、現実がここに追いつくにはまだまだ時間がかかりそうな気さえします。人工知能AIから人工実存AEへの進化はとりわけそうでしょう。
そして、この先予想されるHEとアンジェラの再開がいったい何を生み出すことになるのか、そのあたりもやはりとても気になることです。人を継いだ知性、あるいは実存はいったいどこに向かおうとしているのか?それは、人間はどこから来てどこへ行くのかという問いにも等しいはずです。SFならではの時間的空間的スケールに久々にひたることができました。 (2000.07.27)
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