『陰陽師 生成り姫』 (夢枕獏) 感想
陰陽師シリーズ初長編。ストーリーとしては「付喪神ノ巻」に収録されている「鉄輪」という短編を長編化したものということになる。このように同じ物語の長短を改めることに、うなずけるところもあればそうではないところもあるのだが、まあそれは置こう。いつもは短編のひとつひとつをなめるようにして読んでいる安部晴明のこのシリーズを、心ゆくまで読むことができたのだから。
そして何よりうれしいのは、この編が晴明の物語であるのと同じくらい、いやそれ以上に源博雅の物語であることだ。この編、主人公は博雅といってよいであろう。夢枕獏の物語にはこうした朴訥な男が数多く登場するが、博雅はそのなかでもとりわけ純粋なのだろう。陰陽師シリーズは、その性格上、人という生き物の持っている業をかなり正面から扱うことも多いのであるが、そのもの哀しさは博雅によってこそ救われている。ある意味、晴明よりも不可思議な男であると思う。
(2000.04.02)
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