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2008/11/30

『霧の橋』 (乙川優三郎) 感想

わけあって刀と身分を捨て、紅を扱う商人となった惣兵衛。しかし、いっぽうでは大店の陰謀が、そしてもう一方では亡き父に関する過去からの影が人生にかげりを落とす。そのとき惣兵衛は、そして妻のおいとは……。
すばらしい。素直に言って感動しました。山本周五郎の作品を読んだ後のような清涼な気持ちになれました。物語を貫いているのは、自分はどのように生きるべきなのか、ほかに生き方があったのではないのかという紅屋惣兵衛の迷いなのですが、その迷いに彼自身がひとつひとつ自分ながらの決着をつけていく姿がよいのです。商売仇との駆け引きは企業サスペンスといってよい緊迫感あふれる展開だし、武家時代の因縁が何年もたってから生活を侵食してくる様もまた面白いです。なんといっても、そのなかで惣兵衛の支えになっているのは妻のおいとなのですが、周囲の案件がひとつひとつかたずいていく反面、彼らの仲は妙な具合になっていきます。はたして何を守り何のために男とは生きていくものなのでしょう?解説の北上次郎氏もひいておられますが、あえてここにもひきましょう。「夫が妻を守るのは当然のことで、その結果たとえ命を失ったとしても妻に死なれるよりはましだということです」これだけ書き出すと照れてしまいますが、綴られた物語の重みが、この台詞をじつに生きたものにしていると思いました。(2000.03.20)

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