『デジデリオ-前世への冒険』(森下典子) 感想
人の前世を見ることができるという女性を取材に行った作者は、疑いをいだきながらもその言葉に興味をおぼえ、ルネサンス期にフィレンツエで活躍したという人物を追いはじめる。うーん、これノンフィクションなのですよ。だから、ミステリのようにすっきりとした回答がこの物語の結末に示されているわけじゃない。疑いをもったまま、なんとなく釈然としないまま読了したのだね。過去にデジデリオという彫刻家が実在したということはわかったけれど、これで前世を見るという女性が書物からは知り得ない事実を述べていたということも証明されたことになるとは思えませんね?デジデリオさがしのプロセスはとても興味深いのですが、けっきょく作者自身が前世というのに懐疑的なのだね。作者がさがしたかったのは前世ではないということなのですね。
今生きている自分にプラスになるなら前世もあっていいと思うし、役に立たないなら忘れていることを是としたいですね。人はそれを知って平静でいられるほど強くはないでしょうから。(2000.02.05)
« 『チョコレート革命』 (俵万智) 感想 | トップページ | 『蒼い記憶』 (高橋克彦) 感想 »
「2000年の読書遍歴」カテゴリの記事
- 『突然の災禍』 (ロバート・B・パーカー) 感想(2008.11.30)
- 『悪党』 (ロバート・B・パーカー) 感想(2008.11.30)
- 『ライオンハート』 (恩田陸) 感想(2008.11.30)
- 『幻の声 髪結い伊三次捕物余話』 (宇江佐真理) 感想(2008.11.30)
- 『グイン・サーガ76 魔の聖域』 (栗本薫) 感想(2008.11.30)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント