『魔法飛行』(加納朋子) 感想
『ななつのこ』の続編。きっと続編はないと思っていたので、これはうれしい形で裏切られました。今回、主人公の駒子は前作で瀬尾さんにすすめられたように小説のようなものを書きます。今度はそれを瀬尾さん宛てに送るわけですね。ところが、そのあとに、誰からのものかかわからない奇妙な感想を記した手紙がとどけられるという趣向。物語が終局に近づくまで、その手紙に対しての駒子のコメントがないというのもミステリアスです。すばらしい。
しかしながら、ロジック的には解決されている各々の短編が、心理的には釈然としない部分を残したままで展開していくのは連作ミステリの宿命でしょうか?連作の最後にそれらを総合した謎が呈示されるという趣向はわかるのですが……。「主人公の短大生がこのあとどうしたのかにぼくは興味がある」と前作『ななつのこ』の感想にも書いたのですが、各短編を読んだだけでは、やはりそういう思いが残ってしまいます。いや、もちろん、それらはすべてラストのための伏線なのですが。
いちばん印象深かったのは「クロス・ロード」。十字路ですね。どこに続く十字路なのでしょう?どの道を行けばよいのでしょう?O・ヘンリの掌編のひとつをちょっと思い出しました。(2000.03.20)
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