『時に架ける橋』(ロバート・チャールズ・ウィルスン) 感想
「心に染み入る時間旅行SF」というのが帯にある謳い文句。タイムトラベル方法がちょっと変わっていますよね。掃除もしないのにいつもぴかぴかの不思議な家の地下道を抜けてみるとそこは……という設定。なかなかに面白いストーリーなんだけど、どうも主人公に協調することはできないな。というのも、彼が自分の属する世界からの単なる逃避手段としてトンネルを利用しようとしているからだと思う。解説でハインラインの『夏への扉』やフィニイの『ふりだしに戻る』を引き合いに出してあるけれど、それはどうか?前者は、夏に通じる扉はきっとある、といって未来を肯定する物語だし、後者は過去そのものを愛する人々の物語だよね。過去を肯定すること、未来を肯定すること、それは最後になってこの物語の主人公も気づくようにどちらも現在を肯定する作業に他ならないのだと思います。まあ、物語の結末からいっても作者がほんとうに描きたいのはそこなのだろうね。ぼくとしては解説にもある"The Harvest"という作品、ぜひ読んでみたいですね。(2000.02.27)
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