『ネバーランド』 (恩田陸) 感想
少年は大人になる。これはしごく単純明快な事実なのだが、少年という時間にその身をおいているときは、忘れているのかもしれない。
冬休み、それぞれの事情により学校の寮に居残ることを決めた4人の高校生……。シチュエーションとしてはとても好きだ。作者は「『トーマの心臓』をやる予定だった」とコメントしているが、季節が季節であるし、ぼくの頭にあったのはケストナーの『飛ぶ教室』だったりする。
読んでいるうちに気づくことになるのだが、あの時間、自分にとってのあの時間もけっして光だけに満ちたものではなかったかと……。過ぎ去るとわかっている時間、あるいは過ぎ去ってしまったと認識している時間、通りすぎてしまったものだからこそ、それを思い出すこともできるのか?
ミステリとしてどうかと問われると困るのだけれど、わずか7日間のエピソードに、通常の学園生活では表出しえない何かがうまく配置されている雰囲気のいい物語だと感じた。(2000.07.27)
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