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2008/11/30

『女王の百年密室』 (森博嗣) 感想

ミステリにSF的仕掛けを使うことの是非を問うつもりは毛頭ないのだが、なんだか舞台装置を飲みこめないうちに狐につままれたような気分のままで読了してしまった。時代は22世紀はじめ、舞台はそれより100年ほど前につくられたある特殊な閉鎖都市である。主人公は事故のためそこに迷い込んだ形になるのだが、そこで因縁浅からぬ人物と再開することになる。
死というものを認めない社会において果たして殺人という犯罪が成立するのかどうかを描くためにこの舞台は用意されたのだろうけれど、SF的見地からするといささかその成立事情が不明確であり、そこがぼくにとっては不満である。推測でしかないけれど、ミステリ読みの方にしてみれば舞台がSF的にしつらえてあることがそもそも不満なのかもしれないが・・・・・・。まあ、両者がほどよく融合していれば、いい意味でこれはミステリだとかSFだとかいう議論になるんだろうがなあ。せめて、せっかく登場させたウォーカロンというロボット(?)が、その時代の人間一般にとってどのような存在なのか、もうちょっとつっこんで書いてほしかった。そうすれば、あのシーンのあれも、もっと深い意味でなにしたかも(よくわかる感想でしょう)しれないのに……。(2000.07.02)

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