『活動寫眞の女』 (浅田次郎) 感想
学生運動の激化により東大受験をあきらめた主人公は、京大に入学する。ある日、偶然に出会った同じ京大生に映画の撮影所でのアルバイトを紹介される。エキストラをつとめた時に見かけたのは、ずっと昔に死んだはずの美しい女優であった。
まず、最初にことわっておきます。ごめんなさい。この作品に出てくる映画のほとんどがぼくにはわかりません。見たことあるのかもしれないけれど、題名から1カットでも思い出せるのはほんの数えるほどです。
でも、それにもかかわらず、食い入るように読んでしまうのですよね。読んでいるうちに、その時代の映画にこめられていたものが、自分にも乗り移ってくるような気がする。また、そのような映画であるからこそ、思いを残して死んだ女優というものにもしぜんと納得いくわけで……。こういう物語、好きですね。喪ってしまった時代やものが、ここには何重にもかさねてあります。こういう物語を読み了えたとき、自分自身のそれを振り返ってしまいませんか?甘さが勝っても苦さが勝ってもいけない、ほんとうに微妙な味わいがしなければ、時代をこえて自分の経験と重ねることはできませんよね。(2000.05.28)
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