【読書】2008年の読書遍歴

2009/03/01

『押入れのちよ』 (荻原浩) 感想

・「お母さまのロシアのスープ」 ホラーにしてもほんわかしたものが多いのだろうという勝手な予測をいい意味でのっけから見事に裏切ってくれた。ほんとうに怖いのはやっぱり人間なんでしょうか?
・「コール」美雪と雄二とぼく。みんないいやつらだ。いいやつらだから哀しいな。でこぴん。
・「押入れのちよ」 表題作。会社を辞めて引っ越した築35年のアパートの押入れには明治39年生まれ14歳、花柄の赤い振袖を着た幽霊が……。なんだかね。ちよの行動を見ていると、ほんとうにみんなテダ・アパアパってことでいいんじゃないか、とか思ってしまう。いろいろあるけど、まあ、テダ・アパアパってことでさ。
・「老猫」 昔から猫は化けるものだと決まっているらしい。すべてが混沌としたままに進行する物語は、これぞ恐怖と言えるものである。
・「殺意のレシピ」 その回りくどさが、ストレートな殺意よりもむしろ怖ろしい。
・「介護の鬼」 読み終えてげっそりした気持ちになる。こういう鬼、そのうち世間にありふれるようになりはしないか?
・「予期せぬ訪問者」 ドタバタもの。上記で落ち込んだところにもってくるのがいい。
・「木下闇」 これは救いがない話だな。十五年後の「もういいよ」は悲しすぎる。
・「しんちゃんの自転車」 これがいちばん好きですね。 三年生になっても自転車に乗れない私と教えてくれるしんちゃん。「俺が教えたなんて誰にも言うなよ」「がってんしょうたくん」 私は大人になっても、その約束を守っているのですね。(2008/12)

『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 18 ララァ編・後』 (安彦良和) 感想

アニメよりララァの表情が子供っぽいような気がするのだが、どうでしょう?セイラの正体がブライトひとりの胸の内に留まらなかったことは、今後の展開にどう影響するのでしょう?もう終盤なのだなあ。(2008/12)

『時の"風"に吹かれて』 (梶尾真治) 感想

表題作は「SFJAPAN」他は「異形コレクション」か「SFバカ本」に掲載されたものが多いので、既読多し。

・「時の"風"に吹かれて」 タイムマシンで叔父の愛した女性を救うために過去に。だが規定時間以内に戻らないと、時の風に追いつかれて、遡行前の自分に戻ってしまう。
これは、ラストシーンを成立させるためにある設定なのだね。時間の大いなる辻褄合わせ。よく読むとうまく視点を混乱させられていることが判るのだが、最後でなんとなく納得してしまうから不思議。
・「時縛の人」 同じくタイムマシンものだが、上記とはうってかわったブラックユーモア。これらが同じ短編集内に同居しているのが、いつもながらカジシン作品の不可思議ですね。
・「柴山博士臨界超過!」アルジャーノン賦化剤……。これは地獄だな。
・「鉄腕アトム メルモ因子の巻」 ロボットに不必要な機能って何なんだろうな?人間はロボットに何を望んでおるのだろう?
・ 「その路地へ曲がって」<呪いと願いは、方向が違うだけなのだ>ヌメリサカゲムシが怖ろしい。
・「再会」 思い出したのであれば、なくならないのではないか?そう思いたい。(2008/12)

『仮面ライダー SPIRITS 15』 (村枝賢一) 感想

「あれは…ユリ子じゃなかった…」 バダンの再生改造人間として蘇ったタックル。
「殺されてもいい」、というのが本音なのだろうなと思う。でも、それを超えて還ってくるのが仮面ライダーである所以であろう。そしてストロンガーのプロトタイプであるスパークの登場とともに語られる、沼田吾郎の死のエピソード。ストロンガーの名前の由来自体が友情の証なわけだなあ。この巻は後半のストロンガーが熱いです。(2008/12)

『鋼の錬金術師 21』 (荒川弘) 感想

「この巻から最終章(のようなもの)開始です」とのこと。
「後から俺が必ず来ると信じてくれているんだな」 親父さん、見かけによらずいい男だ。愛妻家だよな。思えば、エルリック兄弟の父親なのだから、それもあたりまえなのか。(2008/12)

『グイン・サーガ124 ミロクの巡礼』 (栗本薫) 感想

ブラン再登場。そうか。ブラン側はグインの記憶の欠落は知らないのだった。タイスあたりであんなに巻数をくわなければ、もう1年ほどは早くこのシーンに辿り着けていたのになあ。
と、第2章からは視点がヨナに移る。スーティ親子を追ってヤガへの旅がはじまる。ヨナの回想にカラヴィアのランとか出てくるけれど、懐かしいな。あまりにも遠いアムブラの日々。あの頃はナリスだって元気で陰謀にいそしんでいたしなあ。
ところで表紙はカメロンなのだよね。とすれば、今一度海に戻りたいという、これは願望の表れなのでしょうかね?(2008/12)

『Jの神話』(乾くるみ) 感想

『リピート』に続けて文春文庫3冊目ということで購入してみました。なるほど、これがデビュー作……・。面白いのだけれど、これを最初に読んだら、続けて読んだかどうかはあやしいな、などと思いつつ読了。名門の全寮制女子高で起きる怪事件を扱っているのだけれど、日常の歪みからやがて伝奇に変貌を遂げる過程は、まるで半村作品を読んでいるかのようでしたよ。テイスト的には『石の血脈』とかを思い起こさせました。
『イニシエーション・ラブ』のようなものが作者の本道なのか、それとも?とか考えてしまいました。そして、解説を読んで、さらに驚愕。オフ会の類にほぼ顔を出さないぼくが知らなかっただけなのか?感慨深いです。というわけで、折にふれて乾氏の作品は読んでいこうと思いました。(2008/12)

『ぬばたまの…』 (眉村卓) 感想

古書。未読だった眉村氏の長編のひとつです。
作者自身を思わせる「前浦拓」は、かんづめになった東京のホテルを抜けだし息抜きに遊園地に来るが、そこで会社員時代の上司である安岡とその家族に会う。安岡に誘われるままにオバケ屋敷に同行するが、そこから迷い込んだのは、5分の1の速度で時間がすぎていく別の世界であった……。
秩序なき闇の世界の描写が、なんとも奇妙。なんというか秩序のなさ加減のチープさが逆に怖いのだな。怪物や怪獣が出てくるわけではない、この世と似通った世界。しかし、そこは、己の気持ちの持ちようによっては明るさまでが変化する、いわば精神状態に左右される世界。そこが最初は暗く見えるのは、気の持ちようの問題だというのだな。ならば、今まさに生きているこの世もそうなのか?ラストシーンの何行か。とりわけ「その光景には、たしかに記憶があった」にそれが回答なのかと愕然としました。(2008/12)

『失われた町』 (三崎亜記) 感想

「消滅」。それは、ひとつの町の住民すべてがおよそ30年に一度、跡形もなく消えてしまう原因不明の現象である。「消滅」した町の意識から伸ばされる触手にふれてしまうことで、人は「汚染」されてしまう。だから、「管理局」は「消滅」した町の記録と情報を回収する。書籍、電子情報、個人的な手紙に記された宛名まで……。
魅惑的な物語である。『となり町戦争』よりも、さらにSF的な雰囲気が濃厚。「特別汚染対象者」とか「分離者」とか、いい感じ。「消滅」に対抗する「管理局」に絡む人々の、それぞれの哀しみに彩られた戦いぶりが読んでいてなんだか痛ましい気分にもなった。淡々とした感情描写は三崎氏の文章の持ち味なのかもしれないけれど、もう少し強い感情的になっていい部分もあったのではなかろうか、とは思う。最初の「プロローグ、そしてエピローグ」が物語本体の約30年後であり、新たな町の消滅現場そのものを描いているのだが、ちょっととっつきにくい感じがするかもしれない。SFっぽさが苦手な人は、そこのところは読み飛ばして、エピソード1「風待ちの丘」から始めるといいかもしれない。あと、装丁が凝っていて、透明なカバーを外すと街が「消滅」するのですな。すばらしいです。(2008/11)

2009/02/11

『あい色神話』 (大和和紀) 感想

しっとりした感じの連作。掲載は「少女フレンド」らしいが、あの雑誌の対象年齢ってどのくらいなのだろう?ずいぶん大人っぽい。第1章が1970年で主人公は高校生。学生運動うんぬんという会話とか、自主製作している映画が「トーキーじゃない」というところに時代を感じるなあ。第二章は1974年で20歳の大学生。第3章は1976年で結婚話が出ている。そして第4章が1980年。70年代の10年間にあたる。だから主人公たちとぼくは学生時代を過ごした年代が10年以上ずれているわけだけれど、ふしぎなノスタルジーを感じます。併録は「ねむり草の夢」(2008/11)

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