« 『ひとつ灯せ 大江戸怪奇譚』 (宇江佐真理) 感想 | トップページ | 浅倉久志氏の訃報 »

2010/02/11

『もいちどあなたにあいたいな』 (新井素子) 感想

じつに久しぶりの新井素子の長編。7年ぶりですね。平成十四年から二十一年にかけて書かれたそうで「くらっときちゃう」と作者があとがきでコメントしてしまうほどに世に出るまでに長くかかっています。
読み始めて、素子節が健在であることに安心しながらも複雑な思いを抱いてしまいますね。物語は女子大生の澪湖・その母の陽湖・父の大介の主にみっつの視点で話が進みます。澪湖は、ごく近くに住む叔母の和(やまとばちゃん)が、娘の真帆を亡くしてから様子がおかしいことに気づく。まるで、よく知っている叔母とは別人であるような……。
ううむ。正直に言って怖ろしい。『あなたにここにいて欲しい』、『おしまいの日』、『くますけと一緒に』、『ハッピー・バースデイ』と作者のサイコものを思い返して、この物語は、そういう系統に連なるのか最後まで読んでじっくり考えてみたのだが、答えはYESでもありNOであるという、はなはだ歯切れの悪いものにならざるを得ない。初読では、物語の結論は明らかなように思ったんだけれど、冷静になるとそうでもないのか?どっちなんだ?作中に引いてあったフィニイの『盗まれた街』のように、やるべきことがはっきりしていればいいのに……。
和に子供ができにくかったのは「違うから」なのか?ほとんど記号としてしか登場しない、真帆こそが世界に和を繋ぎとめる者であったはずなのだが……。世界へのかかわり方は、女性と男性でかくも違う…というふうに、ぼくには読めてしまう。大介の視点は一般的な男性を象徴し、陽湖の視点は現代に増えている社会に出て働いているタイプの女性の視点なのだろうな。いっしょにいて、家族でいて、そしてそれぞれに異世界なのか?思えば、男性視点が和の夫ではなく、幼い頃からの彼女のヒーローであった兄なのも微妙だ。題名の「あなた」は、この大介のことですよね。幼い頃には自分を守って怪我までした<兄>にもういちど会いたい?これが世の男性に対する作者の思いを代弁しているのだとすれば、なんだか、頭を殴られたような気分になってしまう。読了して、ひどく居心地の悪い思いにとらわれてしまうのですよ。この居心地の悪さは、やっぱりぼくが男だからなんだろうか?
この本の感想は、ぜひ女性にこそ聞いてみたいものだと思うのである。

« 『ひとつ灯せ 大江戸怪奇譚』 (宇江佐真理) 感想 | トップページ | 浅倉久志氏の訃報 »

【作家】新井素子」カテゴリの記事

【読書】2010年の読書遍歴」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/5613/47542843

この記事へのトラックバック一覧です: 『もいちどあなたにあいたいな』 (新井素子) 感想:

« 『ひとつ灯せ 大江戸怪奇譚』 (宇江佐真理) 感想 | トップページ | 浅倉久志氏の訃報 »

他のアカウント

2016年9月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  

カテゴリー

無料ブログはココログ

★★★★