【読書メモ・感想】『マイナス・ゼロ』(広瀬 正) 1997/6/8
タイムトラベルSFの佳品を挙げろと言われたら、間違いなくBEST1にぼくが推薦する作品。ちなみに次点は『夏への扉』(R・A・ハインライン)でしょうか。
とにかく、この作品の仕掛けは凝りに凝っていて、なまなかなミステリなど足元にも近づけない完成度を持っています。ふとしたことからタイムマシンで過去に迷い込んだ主人公が、31年の時を経て帰還するまでの物語。そこに仕掛けられたタイムパドラックスの数々はじつにすばらしいものです。昭和初期の生活風景が微に入り細を穿って描写してあり、この物語の現実味を高めています。もちろん単純な比較はできないのだけれど、広瀬正の諸長編はジャック・フィニイの短編に雰囲気が似ているような気もする。過去に対するノスタルジックな思い入れ。それによって眼前に見事に再現される「もうひとつの過去」は、ぼくたちを幻想的な時間に誘ってくれます(1997.06.08)
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