【作家】平井和正

2009/04/12

『インフィニティー・ブルー』 (平井和正) 感想

<21世紀エイトマンDNA>と下巻の帯にあるが、サイボーグ(この物語ではマシナリーと称される)を扱っているということ以外には、『エイトマン』とも『サイボーグ・ブルース』とも何らストーリー的連続性があるわけではない。ヒロインのひとりである記憶をなくした少女がサチコという名前ではあるが……。だから、エイトマンと連続しているのは、むしろその精神なのだといえるかもしれない。
さて、もっとも最近の平井和正の諸作品から入った読者は、けっこうとまどいを覚えたのではないだろうか?『ボヘミアンガラス・ストリート』や『月光魔術團』とは明らかに方向性のちがう重厚な物語が展開する。イメージ的にはむしろ『黄金の少女』や『犬神明』に近いものがあるだろうか?暴力的な背景と純粋な愛情の奇妙な同居、そしてそれゆえに起こる出会いと別れ。こう書いてしまうと陳腐かもしれないが、ひとりの若者が真実の愛を求めてさまよう物語である。昔からの読者であれば頁をめくるにつれ、平井和正を読んでいるんだよなあという満足感に心地よくひたることができるだろう。
そして、最終的には、ぼくの興味は『サイボーグ・ブルース』のラストシーンではけっして解決したとは思えない、異質な者であるゆえの疎外感をどう解決するかということだった。東八郎はその正体が露見した時、去らずにはいられなかった。アーネスト・ライト警部も、最後までそこが自分の居場所であると確信することはできなかった。この物語の主人公ジョナサンはどうか?サチコとの出会いは彼に何をもたらすのか?そればかり考えながら読んでいたものだから、ラスト近くのジョナサンの台詞<ネタバレ反転>

「サチコは夢の女だ」
<ネタバレおわり>には頭を殴られたようなショックをおぼえた。<ネタバレ反転>
「夢の女」
<ネタバレおわり>が何を意味するのかは長年のヒライストにはあまりに明白なことだったからである。こうは考えられないか?<ネタバレ反転>
サチコが数十年前に失った愛しい男とは、じつは東八郎なのだと。サチコはけっして帰らぬ男を待つ「夢の女」なのだと。だからこそ、この物語のラストシーンこそが、サチコにとっては止まったままであった時間を動かす始まりになるのだと信じたい。この物語のサチコにこそ平井作品に数多く登場する「待つ女」として、最初に幸せをつかんでほしいものである。
<ネタバレおわり>

しかし、これだけの作品が、最初はネットでの限定販売予定だったのだから驚く。けっこう高価だったので、万年金欠のぼくとしては涙を飲むしかなかったのだが、ほとんど待つことなく集英社で文庫されたので、とてもありがたかった。限定版もせめてふつうに書店で売っているハードカヴァーほどの値段であれば、ぜったいに買うのだがな。あと、できれば一冊ずつ分売してほしいです(泣)。
だから、集英社さん、次はぜひ『幻魔大戦DNA』の文庫化をお願いいたしますよ!!(2003/01)



2009/03/15

『ストレンジ・ランデブー』 (平井和正) 感想

おどろいた。いまさら平井氏の短編が読めるなどとはゆめにも思っていなかった。しかもSFではない。どうやら習作をもとにしたものらしいのだが、作者の言によると<青春前期の恋心と初心を取り戻したからこそ書けた>とのこと。なるほどと思う。表題作の主人公のひどく稚拙ないちずさや少女のぎこちなく屈折した愛情表現、それは記憶の奥底にある何かを刺激されるような苦々しい甘さだ。「鏡の中の少女」は一読これはウルフガイの先駆作品だと感じることができるだろう。あの人物この人物すべて思い出の中の見知った顔にほど近い。そして「待っている」、題名がこれということはチャンドラーを意識してのことだろうか?じつは不勉強なことながらチャンドラーの「待っている」は未読なので何がどう影響しているのかはわかりかねる。しかし、ひどくせつなく、甘く、そしてつらい作品だと思う。ほんの50ページに流れる時間の重さははかりしることができない(2001.11.24)

2009/03/14

『時空暴走気まぐれバス』 (平井和正) 感想

作者が高校生の頃の作品をベースにしたということだが、きっと全然別物になっているのでしょうね。平井氏というと、同じ作品をリライトしようとしても、あれよあれよと別物に化けてしまうという特技を持つ方ですから。きっと氏の頭の中には無限のパラレルワールドが内在しているのでしょう。ところで、この作品、題名だけからすると眉村卓の『とらえられたスクールバス』なんてのがぼくの頭には浮かぶのですが、あんなにまじめではないというか、たまに平井ワールドに現れるハチャハチャ系のものですね。集英社文庫ですから、先行してるのは『決定版 幻魔大戦』なわけで、そこから読み始めた少年少女はきっと驚くだろうなあ、と……。
(2001.02.18)

2008/11/30

『ウルフガイDNA 8 暴走する架空ヒーロー』 (平井和正) 感想

ううむ、カバーの作品紹介欄に「ますます過激になっていく現代の艶笑譚」なんて書いてあるぞ。なんか最近あぶないシーン多いんだけどさ(笑)これウルフガイシリーズだよね……。あぶなさ、っていっても例えば『狼の紋章』にあったような暗い暗いあぶなさではないのだけどね。いったいどこに行こうとしているのかますますわからなくなってきたけど、もしほんとうに舞台がアメリカに移るのであれば、そこには……や……がまだあるんだろうか?それとも、もうすでに事態はそんな段階ではないのだろうか?(2000.02.26)

『ウルフガイDNA 7 夜の仮面騎士團』 (平井和正) 感想

やはりライノは神話人種と浅からぬ因縁にあるらしい。え?でもってそうなの、とちょっと驚く人間関係も明かされる、と。ってことは母親は誰かいな、などと考えるのもちょっと楽しい。これまた未読な方にはさっぱりわからんコメントになってしまうなあ(笑)。とりあえず、こうくるとあの狼男はぜったいに……ですね。しかし、ライノが西城だとして、いったいいつ和解したのか?それとも、やはり敵対しておるのでしょうか?うーむ、謎だ(2000.01.24)

『ウルフガイDNA 6 無敵遺伝子』 (平井和正) 感想

謎が謎を呼ぶ第6巻。いきなり現れたあの肉食恐竜はいったい何者?平井作品でそういうものに変化するのは敵方と決まっておるのだけれどな……。んでもってメイとアキラの関係がじつはそれで…・・・うーむ、本編を読んでおらん人には何のことやら全然わからんでしょうね(笑)。これだけ話が広がるとどう収束するのかちょっと不安になってまいりました。
それにしても、この巻は昨年末にあちこちの本屋で探したのについに見つからなかったのだけど、どういうことでしょう?(2000.01.24)

2008/11/16

『ウルフガイDNA 5 マフィア狩り』 (平井和正) 感想

「西城恵登場か!?」と帯にあるのだ。人美の危機を救った男の風体はたしかに西城にそっくりだけれど、なんかキャラクターがちがうぞ。男はライノと名乗っているのだけれど、これって『犬神明』のなかで西城の使っていた偽名だったか……?うーむ、これはもう一度先行作品を読み返してみる必要があるかも。ともあれ、この男が西城だとすると、あれから何十年かは経過しているわけだね。西城も不死身ウイルスの影響を受けているはずだから、下手すると何百年かな……。とにかく、確率的にこのシリーズが<ウルフガイ>の正当な続編である可能性はとても高いわけだな。となると、やはり気になるのは、シリーズ主人公の犬神明(メイじゃなくてね)はいったいどうしたのかということなのだが……。(1999/12/05)

『ウルフガイDNA 4 神話人種・負の遺産』 (平井和正) 感想

ポスト・ハルマゲドンってどういう意味だろう?ハルマゲドン後ってことだろうけど、それはウルフの世界ではすでにハルマゲドンがおこっていて、ここで描かれているのはその後の世界ってことかな?帯の文句を見てふとそんなことを思ったのは、どうも出てくる小物とかが近未来っぽい設定だからなのだね。いったい、ここは西暦でいうと何年頃なのだろう?それとも、単に、『幻魔大戦』を筆頭とするハルマゲドン・ストーリーの後に書かれているシリーズってことなのかな?どうも、単純にそうだとは思えないのだがなあ。そういえば、アダルト・ウルフの第1巻『狼男だよ!』がハルキ文庫より復刊とか。これで、メディアはともかく、ほとんどすべてのシリーズが入手できるようになりますね。(1999/10/31)

『ウルフガイDNA 3 華麗なる仮面騎士団』 (平井和正) 感想

シリーズが<ウルフガイDNA>に移ってからどうも気になっていることがひとつある。それは、このシリーズにあとがきがないということなのだ。考えられますか?あとがきのない平井氏の本なんて……。あとがきのない平井氏の本というと、角川から出ていた初期の短編集くらいしか思い浮かばないよ。どうなっておるのかなあ。それとも、電子出版のバージョンにはきちんとあとがきがあるのだろうか?そういえば、以前に出版されていたAcrobatバージョンでは、作者コメントが本文のあちこちに入っていたっけ……。今度のファイル形態は試してみていないのだけれど、同じような感じなのだろうか?なんか気になりだすと、気になって気になって仕方ない……(1999/10/17)

2008/10/25

『月光魔術團2 ウルフガイDNA2 湘南海岸の乱』(平井和正) 感想

う……先月刊です。買うの忘れてました。というか、どうしてヤングアダルトの刊行物ってあんなに書店で不当に差別されているのだ?一般書籍の文庫新書とはいっしょに置いてないところが多いし、コミックの棚にあってもまま子扱い……新刊が出たことさえパッと見にわからないのは問題ありだぞ。やはりデジタルで買うほうがよいのかな?
とにかく、物語のほうはあいかわらずの調子ですねえ。あいかわらず、犬神メイ復帰は遠いよう……と思っていたら、わはははは、なんなんだこの展開は?なんだかハチャメチャさでは『超革命的中学生集団』をしのいでないか……と書いてからふと思ったけれど、そういえば『超革中』も主人公のヨコジュンが……。いったい『ウルフガイ』はどこに行こうとしてるんだろう?(1999/09/26)

※追記 『超革命的中学生集団』って、青い鳥fシリーズで『超人騎士団リーパーズ』って題名でリライトされているのだよね。書店にはラノベがひしめいているし。時代は変わったなあ、と思う。(2008/10/25)

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