【作家】久世光彦

2008/09/07

『ひと恋しくて-余白の多い住所録』(久世光彦)

人名録である。何かに連載されていたのだろうか?ぜひに連載で読みたかったという気がする。俳優、作家と氏の交友を通して描かれる人々の横顔は、たとえばテレビを通してみるものとは微妙にちがっていて面白い。もっと面白いのは交友があった人ばかりではなく、作品を読んだ、あるいは見て感動したという人々についても触れている点か。現実空間からははみだした広大な交友録というわけである。どのような順番で書かれたのかといろいろ考えてみた。連載で読んだらわかったろうか?ちなみに三人目には向田邦子、最後から二番目には昭和天皇について記されている。(1998/05/04)

2008/09/06

『花迷宮』(久世光彦)感想

幻想的雰囲気のエッセイ集。エッセイなのではあるが限りなく物語に近いものがある。それは、語られる主題が黄昏の時間についてであり空間についてであるからだろう。向田邦子と語り合う子供の頃に読んだ父の本棚、兄や姉の本箱からこっそりと盗み出して読んだ少年小説や少女小説。禁断の香りに触れたような乱歩や横溝の世界。驚くべきほど幼い頃までその記憶は溯り、やがて現実空間から遊離したような感覚に陥る。それは少年という日々の煌きが放つ幻惑なのか?それとも昭和のはじめという時代の昏さが残した虚像なのか?そして作者の妖しい記憶とともにいつも在る金木犀の香り。逸品とはこのような物語にこそ捧げられる言葉であろう。(1998/03/15)

『蝶とヒットラー』(久世光彦)感想

実在する店の陳列棚について語りながら、かくも妖しき雰囲気は久世光彦特有のものだろうか?ここに描かれた店店の多くが、訪れようとすれば実際にそうできるかもしれぬ場所だということがにわかには信じがたいことのように思える。そして、きっとそうしたからといってこの連作に描かれたような雰囲気を自分には感じ取れるとも思われない。「義眼工房」の何ともいえぬ味わいや「黒いパイプ店」に醸し出される闇の雰囲気に酔わずにはいられない。「地下軍装店」の耽美さも「神秘昆虫館」の妖しさも好きだ。ひとつひとつの書かれた言葉に妙に納得してしまうのだ。「夢のまどろみにも似た玩具喪志譚」と帯には書いてあるのだが、単にそれだけにはとどまらぬまさに黄昏の国の物語なのである。(1997/12/28)

2008/04/16

『怖い絵』(久世光彦) 感想

怖い絵をテーマにして展開する短編集。昭和20年代を舞台にした私小説風の書き方なんだけれど、読んでいるうちに幻想小説に思えてくるこの妖しさは何なのだろう?「陰獣に追われ追われて」と「誰かサロメを想わざる」がとりわけ気に入る。作者が背景にしている学生時代とぼく自身のそれでは30年ほどの開きがあるわけだけれど、それにもかかわらず不可思議な共感がある。あるいは10代の終わりから20代の初めにかけての一種の暗い熱に浮かされたような記憶は男性共通のものなのか。挿入されている絵ではカバーにもある高島野十郎の「蝋燭」というのが興味深い。「蝋燭劇場」のなかで紹介されている小酒井不木の「死体蝋燭」が妙に生々しいせいでもあるし、その画家が生涯にわたって蝋燭の絵ばかりを執拗に描き続けたというこだわりのせいでもある。一枚の絵画に込められた情念というものは、小説のように頁を費やして語られるものではないだけに、場合によっては深すぎるほど深く見る者の心に刻み込まれるものなのではないだろうか?(1997.2.14)

『一九三四年冬-乱歩』(久世光彦) 感想

「悪霊」の執筆途中に失踪した乱歩の空白の四日間を題材に、乱歩の初期作品のような幻想的な空間が展開する秀作。作中作「梔子姫」が乱歩そのままのイメージでせまってくる。「芋虫」を思い出してしまった。この作家の作品は初めて読んだのだけれど、思わず「怖い絵」という別の文庫本を買ってしまったほど面白い。電車の中吊り広告ではミステリの扱いにはなってなかったけれど、これはミステリよりミステリらしい作品ではなかろうか。乱歩が題材になってなかったら、この作家の作品に触れる機会はなかったのだろうか?そう考えるとちょっと怖い。「読み残した本を悔やんで死ぬのも残念だが、死んでしまったら、これから先書かれる傑作が読めないというのがもっと悔しい。人間の知恵が進めば、その分探偵小説は面白くなる。乱歩は百年生きて、百年読み暮らしたいと思う」というのはこの小説のワンシーンであるが、読み残した面白い小説は、まだまだぼくにとって書庫の大部分を占めているのであろう。彷徨に終わりはない。(1997.2.8)

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