【作家】乃南アサ

2010/05/30

『いつか陽のあたる場所で』 (乃南アサ) 感想

前科のある芭子は29歳、ひとまわり年上の綾香とは刑務所で知り合った。ふたりは出所後、東京の下町でいっしょに暮らしはじめるが……。

文庫カバーの紹介文を読んで、なんだか暗そうな感じだと思ったのですが、あの『ボクの町』の高木聖大巡査が登場するということで、これは読まねばと思って購入。前作の『駆けこみ交番』では、あの状況でもっと話が広がりそうな感じだったのですが、高木巡査は配置替えになったのかな?
起こる事件はどれも微妙に陰湿ですが、主人公ふたりの調子が明るい、いや明るく振舞っているのがわかって好感が持てます。今後、高木はどう絡んでくるのか?次を読むのが楽しみです。

2009/04/11

『行きつ戻りつ』 (乃南アサ) 感想

旅をするのに理由がいるのだろうか、というじつにくだらないことを読みながら考えていた。収録されている各編の主人公たる女性たちは、いずれも何やらわけありで、わけありなゆえに旅をしている。旅をするのに理由がいるのかと考えてしまうのはぼくが男であるからだろうか?たぶん、同性からは同意してもらえると思うのだが、男の旅にはたぶん理由とやらはない。あるのは目的だけだ。その目的は仕事だったり家族サービスだったり自分の遊びだったりする。男の旅は目的地にたどりつくための旅だ。しかしながら、こうしてこれらの物語を読んでいると、女性にとってはそうではないのだな、というような漠然としたものを感じる。何やらわけありげで、どこかに向かっていたとしても、女性の旅はただ目的地に行くための旅ではないのだろう。旅をする理由とやらがあるらしいのだ。だから、旅をすることで癒されたりもするのだろう。考えてみれば、傷心旅行とやらをするのも男性の場合にはあまりないではないか?それは、要するに目的地と不一致な行動になってしまうからなのではないだろうか。そういえば、どこに行くかより誰といくかが云々というようなことを言うのも女性であるように思う。そういうふうに考えながらこれらの物語を読んでいくと面白くもあり怖くもあった。このように書かれてみなければ、しょせんぼくなどに女性の心理はおしはかれないのだと思い知らされるからだ。(2002/12)

2009/03/15

『ボクの町』 (乃南アサ) 感想

巡査見習として派出所に勤務することになった主人公高木聖大。うーむ、コメディなのだろうけど、いろいろと考えさせられる一編かも。警官への志望動機は振られた彼女を見返すため、研修初日で警察手帳にプリクラを貼っていることを上司にとがめられる、いやいや今時の若者です。若く情熱的と言って言えないこともないのでしょうが、どうにも方向性がずれている。おいおい、それはちがうだろうと途中で何度も思いました。こんなのが警官をやっていたらたまらんけど、巷でニュースの俎上にのぼっている輩よりはよほど純粋なのかな。悩んでしまう。
半ば以上も読んでからはたと気がついたのですが、どうも自分は新入社員だった自分を彼に重ねているわけではぜんぜんなくて、こんな新入社員の面倒を見ている自分を想像しているわけです。なんというのか一瞬いやーな気分になりましたよ。もはや自分にはそういう感情移入の仕方しかできないのだろうか、なんてね……。こういう若者諸氏には、声に出さずに心で声援を送っておくというのがいいのかな?例えば年度が替わったら社会人になるような方には一読していただきたい物語ですね。あと、はじめて社会人として先輩という立場に立つ人にも。立場が違えば見ているもの、見なければいけないものは微妙に違うものです。警察という、ほんとに組織の見本のようなものを使って、そのあたり巧く見せていると思いました。

『花散る頃の殺人 女刑事音道貴子』 (乃南アサ) 感想

『凍える牙』の主人公音道刑事の活躍する短編集。
貴子がストーカー被害に遭う「あなたの匂い」。事件そのものの内容よりも刑事の生活ってこんなふうに日常に気をつかわねばならないのならば大変なものだな、と思いました。ラストには滝沢刑事が顔をみせてます。
表題作「花散る頃の殺人」ビジネスホテルで無理心中したとおぼしき老夫婦の足跡を追ううちに貴子がたどりついた意外な過去。ぼくは貴子のように「そういう人生もある」とは思えませんでした。なんだか悲しい感じの作品。
「茶碗酒」一転して滝沢刑事の視点で描く大晦日の夜の一幕劇。こちらは貴子がラストでちょっと出てきます。
『凍える牙』ほど重いところまで描写が達してはいないのですが、女刑事の日常という感じの描写も随所に見られ、なかなかに感じのよい作品集でした。(2001.10.21)

2009/03/01

『風の墓碑銘(エピタフ) 女刑事 音道貴子』 (乃南アサ) 感想

音道・滝沢の名コンビ復活。作中でふたりはそうは感じていないようだけれども、やっぱりこういうのが名コンビ。前回までの事件のこととかあって、滝沢を信頼するようになったのかなとか思っていたのだが、そこまで甘い見通しではないのだな。やっぱり滝沢を目の前にすると身構えている。今回は音道の私的な事情のほうがなんだか不完全燃焼な感じで、それもあってどうもぎくしゃく。
音道貴子シリーズが、この先どこに向かうのかとても興味深いところです。(2009/02)


2008/11/30

『来なけりゃいいのに』 (乃南アサ) 感想

働く女性たちの心に芽生える闇を綴った短編集ということになるか?裏表紙の作品紹介を読んで、なるほどこういう筋でこういう題名とはいささかキツイなあ、と思って手にとったんだけど、これ表題作の紹介ではないのだね。よくよく見ると小さく(「春愁」より)って入っている。なるほど。ストーリーとしてインパクトがあるのはこちらで、題名としては表題作がいけるっていう判断か。うーむ。
女性ならずともサラリーマンなら身につまされるであろう「熱帯魚」にはじまり、矛盾点があるようでちょっと気になるんだけどありそうで怖い「ばら色マニュアル」、この作品集中もっとも不安な気分になった「降りそうで降らなかった水曜日のこと」(2000.07.02)

『悪魔の羽根』 (乃南アサ) 感想

季節にまつわる心理ミステリ。表題作の悪魔の羽根っていうのは雪のことだと帯に書いてある。ううむ、雪のない国に育った主人公がそれに追いつめられていく過程ももちろん怖いんだけど、結論がそこに行くのか?ってところがぼくはもっと怖いんだけど。同じことが「はびこる思い出」とか「秋旱」とかにも言えるような気がするのだけど……。その怖さっていうのはいかにも異常な行動が日常の中に取り込まれてしまうということ。女性が主人公の場合にそれは顕著ですよね。男はなんというか日常に戻れないんですよ、そういう場合。そう思いませんか?(2000.05.06)

『凍える牙』 (乃南アサ) 感想

「バツイチ刑事の孤独な闘い」って帯にあるんだけどね。まあ、たしかに主人公の音道貴子は警視庁機動捜査隊っていう男の職場?のなかで孤立しているように見えますね。そこが読者の共感を呼ぶってのは、それだけこの世に男の職場、いや正確にいうならば女性を締め出している職場が多いってことかねえ。難儀なことです。しかし、お互いにわかりあうことを拒否するという態度はどうかと思うんだが……。
だから、この物語のなかで誰にいちばん共感できたかといえば、それは疾風なんだな。このようにこそ生きてみたいですね。信じるもののためにこそ生き、信じるもののためにこそ死ぬ。それが美しいかどうかはべつにして、やはり潔いと思うよ。人間の多くは最早そのようには生きられないし、死ぬこともできないのだから。(2000.02.13)

2008/09/29

『花盗人』 (乃南アサ) 感想

作者の直木賞受賞第一作である表題作を含む短編集。ちょっと怖い話が多い。それも女性の怖さというのか。冒頭の「薬缶」というのはごく短い話なのだが主婦の不満ということを題名がじつにうまく象徴していてうまい。しかも耳に?いやほんとうに怖い。ある女性と義弟の不可思議な関係を描いた「愛情弁当」というのもよい。これを愛情だと言われてしまうとなんとももっていきどころがなくなってしまうんだがなあ。「最後の花束」っていうのもそういう意味では女性の怖さを描いた作品ですよね。そう、男が真似ようと思ったってかなうわけはないんですよ。それに表題作もなんというか口の中で砂を噛むような読後感ですね。どうも、なんだかやりきれないような思いに陥ってしまいますよ。こういうのがほんとうの怖い物語です。(1999/04/11)

2008/09/23

『死んでも忘れない』 (乃南アサ) 感想

父親が朝の満員電車で痴漢に間違われたことをきっかけに徐々に崩壊していく家庭を描いた作品。読んでいる最中に絶えず思ったのは家族ってこんなにもろいものなのかな?という疑問です。この家族の特殊性を考慮に入れてもちょっとこれはひどいのではないでしょうか?家族の崩壊と言ってしまうから違和感があるのかもしれない。この家族にはほんとうの意味でのつながりなどじつは最初からなくて、事件をきっかけにして自分たちが家族というものを演じていただけなのだと気づかされる物語ということかな?それならばわからないではない。これだけもめておいてこの結末というのにもどこか釈然としないものが残るのですが、心の奥底にずっとがまんして溜めていたものをお互いに吐き出したからということですね。これでやっと家族として出発したということになるのでしょう。この先をもう少し読んでみたいという気がします。(1999/02/14)

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