【作家】清水義範

2010/06/20

『やっとかめ探偵団』 感想

『やっとかめ探偵団』がドラマ放映されたので観ました。
老人と名古屋という清水義範のお家芸のふたつがみごとに融合した原作シリーズのファンとしては、どんなものになっているのか気になるところでした。序盤、橋爪功が演じる主人公の波川まつ尾はじめ、探偵団の面々であるお年寄りたちのパワフルさばかりが強調されているように感じ、思わず『いじわるばあさん』か?と口走ってしまいました。まつ尾はパワフルなだけでなく、知恵もあり人徳にすぐれたスーパーばあちゃんなわけですが、どうもそうは見えないのですよね。それでも、事件の解明が進むにつれ、シリアスな展開に。後半は原作に沿っていましたが、この短い時間では前後の事情を説明しきれてない部分もあるように感じ、せっかくなのに惜しいなあと思いました。
それと、原作では、名古屋弁をしゃべれない鷺谷刑事が登場します。彼は、まつ尾の人徳に深く感化されていく素直な青年です。東京出身なのに、そこまで好青年でよいの?という感じ。まつ尾もいいけれど、ぼくは鷺谷のファンなのですよ。で、このドラマでは鷺谷刑事の代わりに、まつ尾の経営する駄菓子屋に下宿する名古屋嫌いの女性刑事が登場します。なぜ、こうしたのでしょう?せっかく下宿までさせたのだから、もうちょっと突っ込んでもよかったのではないかと。



2009/05/10

『青山物語1979 郷愁完結編』 (清水義範) 感想

10年を経てついに刊行された『青山物語1971』『青山物語1974スニーカーと文庫本』に続く清水義範の自伝的作品の完結編。主人公で作者の分身である平岡義彦がその後どうなったのか、とても気になっていた読者はぼくだけではあるまい。リアルな清水氏がその後どうされたのかということは『青二才の頃』で先にタネあかしを知ってしまっているわけで、それが物語的にどのように処理されているのかが、読みどころ。
どこまでが事実なんだろうな、などとニヤニヤするのも、この物語に限っては正しい読み方であるように思う。サラリーマンとしては、中盤に出てくる<横メリ>のエピソードがやっぱり身につまされるなあ。事は違えど、みんな同じような経験をしてるんだよね、きっと。あと、作中には初期短編の成立エピソードも出てきて興味深い。前作まではほんとに初期短編だったけど、今回出てくるのは『昭和御前試合』以降なので、読まれた方も多いのではないかな。けっこうさらりと書いてあるけれど、あのようにアイデアを形にするのは並たいていのことではないですよね。
物語の軸になるのはもちろん北原亜美とのエピソードなんだけど、結末を知っている読者としては、どのように処理されているか、ですよね。ううむ。物語的にはこうなりますか。はたしてこれは作者の照れ隠しなのか、こうあればよかったという願望か。いや、じつはこっちが真実で先のエッセイのほうが照れ隠しのフェイクなんていうこともないとは言えませんわな(笑)。いずれにせよ、サラリーマンやりながらも作家になりたかったなあ、などと思ったことが一度でもある人間ならおおいに共感しながら読むことができるでしょう。まあ、それを実現するのは、解説にもあるように、ほんとうに並たいていのことではないのですけど……。(2004/01)

2009/04/12

『青二才の頃 回想の70年代』 (清水義範) 感想

もちろん、70年代をモチーフにした著者の青春回顧録として単独で読んでも面白い。しかしですよ、清水義範で70年代ということは、よくよく考えながら読まないといけないのではないかいなあ、などと思ってしまうのだ。どうしてかって?例えばノンSFでいうならば氏の自伝的作品『青山物語1971』、またはその続編の『青山物語1974』がまさにこの時代を取り扱っている。SFならば「国語入試問題必勝法」と並んでぼくが氏の作品を読み出すきっかけとなった「また会う日まで」、またはちょっと時代を遡ることになるが「イエスタデイ」や「続・イエスタデイ」。そう、清水氏は、物語に自伝的要素を取り込んできた人なのである。そのほとんどを、どこまでほんとうでどこからフィクションなのかなあ、などとニヤニヤしながら読み、学業や仕事の合間に投稿作品や同人誌を作っていたというような話に大いに共感してきたのです。それで、このエッセイ集。つまり、これって今までの作品のモトネタというかネタバレというか、そういうものが含まれているのですよ。
あ、これがあの話に出てきたあのエピソードのほんとうのところか、などという読み方をするエッセイじゃないのかな?うーむ。とりわけ、師匠である半村良氏との出会いのエピソードは興味深い。このエッセイ、70年代初めから、氏が作家としては作品集『昭和御前試合』を出版するまで、個人としては『青山物語1971』にも登場するあの女性とのご結婚が決まるまで、である。あと、余談ではあるが、この範囲だから、清水義範といえばインド、インドといえば清水義範だとはいえ、ノンフィクションだと80年代後半のこのエピソードは出てくるはずはないわなあ、と思っていたのだが、ちゃんとインド旅行のエピソードも入っているのだ。清水義範おそるべし(笑) (2003/05)




2009/03/15

『源内万華鏡』 (清水義範) 感想

エレキテルで有名な江戸時代の奇人、平賀源内の一代記。SF作品ではおなじみの歴史上の人物なのだが、そういえばきちんとした伝記を読んだことはなかった。源内の登場するSF作品なら、それこそ数々知っているというのに……。杉田玄白は、源内の墓碑銘に「非常の人」とのコメントを残しているそうだけど、うーむ、これは何とも変わった生涯だよね。エレキテルで有名なのだから蘭学にも明るかったのだろうと勝手に思いこんでいたんだけど、オランダ語はほとんど読めなかったとかいうのも何だか不可思議。よく言えば直感的な職人発明家、悪くいえば思いつきの人だな。しかし、思いつきでここまでいくのだから、それはそれですごいのか。(2001.11.24)

2008/11/30

『やっとかめ探偵団とゴミ袋の死体』 (清水義範) 感想

祥伝社の400円文庫。文庫15周年の特別書下ろしということで、一気に魅力的な題名が書店の本棚に並びましたね。あれほどの冊数なのに、最初にこれを手にとるところが、いかにもぼくらしい読書といえましょう。待望のやっとかめ探偵団シリーズですもんね。しかし、ああ面白かったと読了して妙に損した気分になるのはどうしてだろう????やはり本読みとしては、もうちょっとボリュームがあったほうがよいのだよね。せめて上下の余白は何とかしてほしい(泣)。
それはともあれ、名古屋の仲良しおばあちゃんたちの<やっとかめ探偵団>は健在です。ついにインターネットまで導入なのですね。うーむ、時代だ(笑)。例の東京弁の刑事さんの活躍がちょっと少なかったのが、不満といえば不満なのですが……(2000.11.20)

『尾張春風伝』 (清水義範) 感想

徳川吉宗に逆らった男、徳川宗春。なかなかに面白い。軽妙にして洒脱、野暮はいっさい抜きというところが痛快である。
吉宗というのはどのような時代劇に出てきてもたいていはよい役どころである。徳川中興の祖ということで、悪くは書かれない。例外としてすぐに思い出せるのは、『乾いて候』くらいか……。まあ、それはさておき、武と質素倹約を基礎にした政策に対する反発は当然あったのだろうが、享保の改革はあからさまに失敗とはされていない。それを吉宗-宗春という同時代の政治家の手法を対比させることで否定してみせるところなどとても興味深かった。なにしろ、吉宗と同じような経緯でこちらは尾張藩主の座についた宗春であるが、やることなすこと奇抜である。本人はよくてもこれでは家来はたまったものではないだろう。しかし、このたまったものではないところが民衆には受ける。まるで吉宗とは水と油である。このふたりが協力しあっていたら、さぞや面白かろうにと思うのだが、そのようなことの通る時代でもあるまい。
作者が清水義範だから、『金鯱の夢』のようなパロディ日本史で、名古屋びいきに書いてあるのであろうから、そこのところは差し引こうと考えていたのだが(笑)そんなことをする必要もない本格的な時代ものに仕上がっていて、おおいに楽しめる。(2000.09.03)

2008/09/07

『家族の時代』 (清水義範) 感想

49年連れ添った両親が大祖母の三回忌の席で突然に離婚を宣言、仲がわるくなったわけでもないふたりがどうしてそのようなことを言い出したのか判らない家族は大騒ぎという物語である。
長男、長女、次女それぞれの家庭の事情を時には鋭く時にはコミカルに描き出しながら遺産相続という問題に焦点をしぼっていくやりかたはいつもながらに思わずうなってしまうほどうまい。この三つの家族というのがいかにもありそうな日本の今日的悩みをそれぞれにかかえていてとてもリアルなのである。それでいて深刻にはならないところもじつにいい。
この夫婦の考え出した作戦とその甘くほろ苦い結末には思わずニヤリとしてしまう。(1998/08/30)

『春高楼の』 (清水義範) 感想

『三四郎』のパスティーシュと解説にある。清水義範なのだから、まあそうした分類はけっして間違ってはいないのだが。もっと単純に楽しめる青春小説だといったほうがよいと思う。『三四郎』未読でももちろん十分に楽しむことができる作品。むしろぼくにとってはオーバーラップするのは清水氏自身の自伝的作品『青山物語1971』とか、予備校を舞台にした『学問のすすめ』三部作の方だった。
明治33年頃を背景に、地方から上京したひとりの帝大生を主人公にその日常を描くといったもの。当時の風俗が丹念に描かれていて興味深い。(1998/05/31)

『改訂決定版笑説大名古屋語辞典』 (清水義範) 感想

共通語からの逆索引までついた本格的な辞典である。ここまで言葉に思い入れられるというのはすごいですね。考えてみれば、氏自身が語るように、こんなことはべつに名古屋が特別なのではなく、各地方地方で成立する範囲のことである。まあ、だからこそ名古屋出身ではないぼくが読んでも、自分の出身地の何かと照らし合わせてニヤニヤするから面白いのでしょう。でも、やっぱり、ここには名古屋人しかわからない微妙なアレとか言外に匂わされている絶妙なソレといったものがあるのではないのか?名古屋に生まれなかった人間としては清水義範の語るそのような面白さを真には理解できていないのではないかと、ちょっと複雑な気分になってしまうのである。(1998/05/04)

2008/09/06

『日本ジジババ列伝』(清水義範) 感想

もはや老人を描かせて清水義範の右に出る作家はいないだろう。傑作「霧の中の終章」や「ワープロ爺さん」、また『やっとかめ探偵団』を考えてみればすぐわかることである。その「老人物」の短編がまるまる一冊、こんなおいしい短編集はなかなかにお目にかかれたものではない。あんまりギャグ味はなくて、しみじみ書いているというところもよいねえ。作者のインド旅行体験をバックに描いた「八十年間世界一周」に老人のヴァイタリティを見ることもできるし、嫁姑問題を扱った「お客さん」に人生の悲哀を感じることもできる。あとがきに「老人は老人になり得た点ですばらしい、天才的な人物が大いに偉業を残しても、例えば五十歳で亡くなっては悲しいではないか」とあのだけれど、なんだか納得してしまうなあ。老人への愛がある作品集です。(1997/11/23)

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