【作家】ロバート・ゴダード

2009/04/12

『石に刻まれた時間』 (ロバート・ゴダード) 感想

円を基調とした奇妙な胸騒ぎを誘う家<アザウェイズ>、そこに住まう人々はやがて夜毎の奇妙な夢に支配されるようになり……。面白いよ、とてもすばらしい。ホラー風ながら、ぼくの嫌いな「いわゆるホラー」には陥らず、その奇妙な現象をもとにして起こる事件と、それに人生を翻弄される男を重厚に描いていて飽きさせない展開はさすがゴダード。死せる妻に語りかけるという形の告白調も読むほどに味がある。物語としては、これで充分なんだがな。ゴダードだってことに期待しすぎるのかな?この<アザウェイズ>っていう家の処理方法がやっぱり中途半端でしょう。奇現象の理由を明確に説明しないことで玄妙な感じを出そうとしたのかもしれないけれど、説明しないというやり方はやっぱりオカルトとかホラーとかにしか通用しないもんだと思う。人間には理解できないんだけれど、そういうこともあるんだってやつね。でも、これはあくまでミステリなわけでしょう。ならば、<アザウェイズ>というホラー風素材についても、やっぱり一定の解釈を示してほしかったなあ、と思う。「キングを連想する向きもあるかと思うが」と解説にあるけれど、奇妙な家に精神を蝕まれていくというのは、つまり『シャイニング』のことだよね。同じ題材を扱っているけれど根本的に違うと言われればその通り。解説者はキングを「漆黒の闇」、ゴダードのこの作品を「透明の闇」と表現しているけれど……。問いたいのは、じゃあその場合軍配はどちらにあがるのですかね、ってこと。少なくても、キングの『シャイニング』は純粋に怖ろしいと感じるための作品だからね。恐怖を描くのであれば、その闇はやはり漆黒でなければならないんじゃないだろうかな?まあ、漆黒にしてしまうと、そもそもミステリでなくなってしまうんだが。奇妙な表現かもしれないけれど、一般的にみれば佳作だがゴダードにしては少し物足りない、というところですね。(2003/02)


2009/03/14

『永遠に去りぬ』 (ロバート・ゴダード) 感想

ゴダードらしい重厚な作品。ある夏の日暮れ、ささいな偶然からほんの一言だけ言葉を交わした男女。何事もなければ、そのまま忘れ去られてしまうはずの小さな出来事は、しかしながら続けて起こった凶事のために、重要な意味を持つようになります。
このささいな偶然の出逢いに共感できるかどうかがこの物語に対する評価を二分するかもしれません。なぜなら、これほどに登場人物たちの運命を翻弄するきっかけとしては、いかにも弱い感じがするからです。しかしながら、あなたが、人生の皮肉と運命の不可思議にほんの少しでも理解を持つ方であるなら、きっと末尾に語られる主人公のこの言葉に同意できるにちがいありません。<ふたりの人間が、たまさか、見知らぬ旅人同士ではなくなることがある。そうなったら、もうあと戻りはできない>(2001.04.15)

2008/11/16

『閉じられた環』 (ロバート・ゴダード) 感想

1931年、豪華客船に乗りこんだ詐欺師のコンビは有名な投資家を父親に持つ美女ダイアナと知り合う。これぞ絶好のカモとばかりに策略を巡らすふたりだったが……。
背景を1931年に置いているとはいえ、物語はどうやらリアルタイムで進行するような感じだったので、じつは購入するにあたっては、散々迷った。なにしろ『蒼穹のかなたへ』は口に合わなかったので、その傾向のものだとどうかな、と思っていたのである。しかしながら、そのような心配は無用でした。ストーリー展開は読んでいて飽きるようなものであはまったくありません。いささか見え透いた部分もあるものの、かなり楽しめました。しかしながら、やはりぼくとしては、ゴダードに期待したいのはもっと陰鬱で重層的にのしかかってくるような過去からの影です。ラストシーンも、なんだかとってつけたような感じがしたのですが……(1999/10/17)

2008/09/29

『鉄の絆』 (ロバート・ゴダード) 感想

若くして世を去ったイギリスの詩人トリストラム・アブリーの姉ベアトリックスが何者かに殺害された。現場の状況から古物商のコリンが逮捕されるが、その弟デレクは無実を訴える兄のため行動を開始する。同じ頃、ベアトリックスの姪シャーロットは、トリストラムの伝記作者から、ベアトリックスの遺物のなかに過去のいきさつを示す手紙があるはずだから見せてほしいと頼まれるが……。
ゴダード得意の過去の因縁ですね。おばの死を契機にして、隠されていた過去がじょじょにあばかれていき、これまで信じていた世界を失っていく主人公。ぼくの好みとしては後半にアクションが入りすぎるかなというところです。まあ、謎そのものはかなり楽しめるのですが、うーむ、あそこでやめておいてもよかったんじゃないか?という点はございました。まあ、これは好みの問題でしょう。ひとつぶで二度おいしいと感じる方もいらっしゃるでしょうし、木に竹を次いだようなと感じる方も……。(1999/06/19)

2008/09/23

『惜別の賦』 (ロバート・ゴダード) 感想

三十四年前、主人公の大叔父を殺害した罪に問われ死刑になった親友の父親はほんとうは無実だったのか?姪の結婚式にとつぜん現れた昔の親友は父親の無実を訴え首吊り自殺してしまう。その後、主人公の周囲では奇妙な出来事が起こりはじめ……。
ゴダード得意の過去に封じ込められた真実が物語の進行とともに明らかにされていくというパターン。失われた友のために真実を追い求めるという行為が、じつは自分自身や家族を追い詰めていくことになるというところが面白さ。事実がひとつひとつ明らかになっていくに従って事件の様相が二転三転するところもいつもながら見事ですね。謎の女と大叔父の墓の前で話をする「今日」にはじまって、回想の形で事件が語られる「昨日」、そしてふたたび冒頭の続きにもどって「明日」、この女はいったい誰なのかというのがもちろん物語のひとつの焦点になってくるわけです。過去を追求することで主人公がつかんだのが単なる事実よりも重いものです。その重さのゆえに主人公はふたたび「明日」に向かって歩き出すわけですが……。感慨深い結末の物語です。(1999/02/14)

2008/09/06

『闇に浮かぶ絵』(ロバート・ゴダード) 感想

ゴダードはどうも当たり外れが大きいような気がしているのだが、これは間違いなく「当たり」のほうである。
舞台は19世紀終わり頃のロンドン。自殺したと思われていたひとりの男が突然かつての家族と婚約者のもとに姿を現す。が、家族たちはみな彼を詐欺師として扱い認めようとはしない。とりわけ男の代わりに准男爵を受け継いだ弟と、彼のかつての婚約者と結婚している男性にとっては、その存在は彼らの居場所そのものを危うくするものであった、というのがストーリー。
物語は三人称で語られる部分とかつての婚約者の夫トレンチャードの一人称の手記が交叉するように書かれている。錯綜するプロットは最後まで飽きさせないし、冒頭の謎めいた男の出現シーンからラストの劇的な結末まで息を詰めるようにして読むことができる。ただ、何となくこのもと婚約者の女性の行動ってのがどうかと思うぞ。いくらかつての婚約者と思われる男性が突然に現れたからといって、あれはないんじゃないかい。いずれにせよ登場人物たちの中でいちばん可哀相なのはトレンチャードであることに間違いないですね。世の「夫」というやつの存在意義を問いかける(笑)目的で書かれたのではないだろうが。ぜひ女性の方々の御意見をお聞きしたいところです。(1998/03/08)

『千尋の闇』(ロバート・ゴダート)感想

イギリス史には疎いので、どの程度歴史的事実を踏まえてこの物語が描かれているのかは判らないのだが、そうしたことを抜きにしても文句なく楽しめる凝った展開のストーリーである。元歴史教師の主人公は、気晴らしに出かけた旅先である実業家を紹介され、彼から仕事を依頼される。その仕事とは、チャーチルやロイド・ジョージとともに大臣に抜擢された若き政治家ストラフォードが何故に理由もなく婚約者に去られ、また大臣の座を追われたかという謎を、彼の残したメモワールを手がかりに探って欲しいというものだった。主人公は調査を薦めるうち、彼が離婚した妻の家族に浅からぬ関わりを持つことに気づいて…、というストーリー。これが処女作だそうで、ぼくが大いに気に入った『リオノーラの肖像』が第二作だというから脱帽するしかない。重曹に歴史をからめ、そのゆがんだ鏡として現代を設定するのはこの作者の得意とする手法であるらしい。この歪んだ鏡を通して、主人公はストラフォードに一体化していくというわけである。なにしろ錯綜していて、かなり複雑な謎が設定されている。時間をかけて読むのに価する長編である。(1997/12/28)

2008/05/25

『蒼穹のかなたへ』 (R・ゴダード) 感想

以前に『リオノーラの肖像』を読んで、これはすごい作家だと思った。輻輳するプロットと重厚な雰囲気がゴシック・ロマンという言葉になんて似つかわしいんだと思ったものである。ところが、今回のこの作品、面白いんだけど少々平板なような気がした。『リオノーラの肖像』が変化球のオンパレードだとすると、こちらはかなり直球勝負なのだ。下巻の背表紙にゴシック・ロマンとあるのはちょっと当たらない、どちらかというとハード・ボイルドになるのだろう。とするとどうか?ハードボイルドとしては少々詰め込みすぎかもしれない。で、結果としてはこのプロットからすると長すぎるのかもしれない。ただ、ぼくの場合、読み始める前に『リオノーラの肖像』みたいなものを期待してしまったからこの感想なのであろうな。先入観をもって読んではいけないということか。(1997/8/24)

2008/04/21

『リオノーラの肖像』(ロバート・ゴダード) 感想

第1次世界大戦を背景に、とある貴族の館を舞台にした、複雑怪奇な人間模様の物語。本の帯にゴシック・ミステリーとあるけどちょっとちがう。70歳になった女主人公が当時を振り返りながら娘に自分の人生を語って聞かせるという趣向で、ふつうに言う意味ではミステリ色はそんなに強くないとぼくは思う。むしろ、この人間関係、いや息が詰まってしまいそうなくらいに複雑ですね。殺人事件の犯人なんてどうでもよくて、人間関係の縦糸横糸をどのように解きほぐすかですね。途中でだいたいの筋立てが見えてしまったんだけど、それでも面白い。8月には新刊『碧空の彼方へ』(仮題)が出版されるそうなので、今から楽しみです。(1997/6/15)

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