【作家】田中芳樹

2009/05/10

『黒蜘蛛島 薬師寺涼子の怪奇事件簿』 (田中芳樹) 感想

シリーズ第5弾。ええと、ノベルズ版は講談社と光文社で交替に出版されることになったのであろうかな。かつては平井和正が『幻魔大戦』で同じようなことをやっていたが、あれだってシリーズは相互補完的とはいえ一応別物だったわけで。こんなふうに、ひとつのシリーズが出版社を交互に出るのってどんな理由さ、といらぬことが気になるなあ。
物語としては安定した面白さ。例によって怪奇な犯罪者(今回は題名通り蜘蛛の怪物です)に対して我らがドラよけお涼&泉田@朴念仁警部補&その他大勢(笑)の繰り広げる問答無用の正義の戦いをたっぷり楽しむことができます。そうだなあ、正義などという言葉を正面に据えるといかにもうさんくさくなってしまいそうなところ、ちっともそういう重苦しさがないのは涼子のつきぬけたキャラクタによるものでしょうな。しかしながら、このままいかにも安定したシリーズになってしまうのもどうかという思いはあって、今回で言えば涼子と泉田の仲がほぼまったく進展しないことには、いつもながらじれったくなります。いや、進展したら話が終わってしまいますが(笑)。今回は<椅子>にすわっただけですものねえ(笑) (2003/11)

2009/04/12

『創竜伝13 噴火列島』 (田中芳樹) 感想

気を持たせる『創竜伝12 竜王風雲録』から早くも2年。いや、それでもコンスタントに続編が出るだけよいか。あいかわらずの毒舌満載。いや、もちろんそういうのが好きだから読んでるんだけれど、度がすぎるとまたストーリーが進捗しないぞ(笑)。作中に出てくる「かんじぼくめつどうめい」というのが笑わせてくれる。読み仮名ふってる感覚でしかなくて、それはどこまでも漢字でしかないよな。それをやるなら、清水義範の「言葉の戦争」くらい徹底的にやらないと。このキャラクタはどこかにモデルがいるのかと興味深い気も……。
小早川奈津子との大同団結という、いささかとんでもない展開にものけぞったが、征夷大将軍というのはやりすぎではなかろうかな(笑)。この場合の<夷>はあの国のことを指すことになるのだろうなあ。「春秋に義戦なし」という言葉は、どこぞの国の誰かさんにぜひにも聞かせてやりたいですよ。もちろん、わが国のあの方にもね。政治に関するニュースを見ると、あの方は何だか大きなかんちがいをしているのではないのかと、かなり不安になってきますよ。同盟国だなんて思っているのはあの方だけだったりして(笑)。あの国の内実がこの物語ほどにはひどくないことを心のどこかでは信じていたいですねえ。
をーっほほほほほほほほほほほほ!と雄たけびをあげながら、たぶんまた2年ほどは後になるであろう続きを待つとしましょう。(2003/06)

2009/03/15

『クレオパトラの葬送 薬師寺涼子の怪奇事件簿』 (田中芳樹) 感想

ドラキュラもよけて通るお涼、通称ドラよけお涼の活躍は『魔天楼』『東京ナイトメア』『巴里・妖都変』に続く第4弾。今度は豪華客船クレオパトラ八世号を舞台にしての大暴れ。やっていることは一見無茶苦茶だし、毒舌もあいかわらずなのだけれど、筋は通っているのでしょうねえ。妙な感想かもしれませんが、ヤン・ウェンリーもこのくらいの融通がきけば死なずにすんだのかも。
加えて政治ネタのあぶないパロディも健在。この物語の敵役ホセ・モリタっていうのはつまりあの方なのでしょうけど、ここまで茶化して大丈夫か?日本の惰弱な政治家ならばともかく……。「テロリストハミナゴロシダ」には失笑いたしました。
あと、泉田警部補が野暮だと以前にも感想を書いているけど、その超鈍感さはここでも継続中。というか、涼子も素直じゃないのか、フクロウのブローチ。ふたりとも優秀な警官なのだろうけど、その方面にはかなりの不器用。そのあたりも、ヤンとフレデリカを彷彿とさせるような……。もしかすると作者がそういう感じの男女関係が好きなだけなのかな?
それと、もうひとつだけ。ネタばれなので、反転させときます。このやりかたって筒井康隆の『富豪刑事』?どう思います、みなさん?

2008/11/30

『創竜伝12 竜王風雲録』(田中芳樹) 感想

前巻は97年の12月か……。この調子では次の巻の21世紀初頭というのは2001年1月のことではないようだね(笑)。ともかく、正編の続きがはじまったことはめでたいのですが、現代編は最後のほんの数ページのみ。うーむ、やはり、昔の名将をたたえるよりも現代の無能な政治家を思いきりパロってほしいと思うのは、ぼくも性格がよくないからでしょうか?それとも続の毒舌をこころゆくまで読みたいと思うのはマゾ気があるのか(笑)。ファンタジーとしてはこの過去の中国を舞台にしたものもとても面白いのですが、どうしてもそれだとファンタジーとしてだけ読んでしまうのですね。過去に学ばない人間の典型ですか(笑)?とにかく、次には舞台も現代に戻るようだし、おおいに期待したいところです。(2000.09.03)

『巴里・妖都変 薬師寺涼子の怪奇事件簿』 (田中芳樹) 感想

講談社文庫-講談社ノベルズ-光文社、シリーズ3冊目だというのにめまぐるしいですね。いったいどういういきさつがあるのか……いらぬ心配をしてしまいます。本棚に並べると妙に不揃いだし……。
それはさておき、ドラよけお涼の活躍はますます拍車がかかっているようです。泉田警部補もだんだん彼女の行動に感化されてきておるのでしょうかね。どうでもいいけど、このふたり、お涼が口下手なのか、それとも泉田が野暮天なのか(笑)。まあ、あのパターンで彼女に行動されては、日常のささいな事柄をも素直には受け取れないでしょうか?「敵と戦うとき安心して背中をあずけることのできる男」ってのは泉田氏のことだと思いますが……。(2000.02.05)

2008/11/16

『アルスラーン戦記10 妖雲群行』(田中芳樹) 感想

7年ぶりの新刊です。細かな人間関係をかなり忘れてしまっているのですが、それでも読み始めると物語のなかに魅き込まれてしまうのは、やはり田中芳樹の筆の力なのでしょう。パルスの王都はすでにアルスラーンによって奪還されていますので、興味は蛇王ザッハークやら銀仮面ヒルメスの動向にあるのですが、前者の色が強くなればますますファンタジー的になっていくのでしょうが、やはりぼくとしてはもう少し政治がらみの話を読みたいと思います。次の巻はいったいいつ出版されることになるのでしょうか?今度はあまり時をおかずに読みたいものです。(1999/12/14)

※Amazon Linkは、2004年刊行の「旌旗流転」「妖雲群行」合本です。

2008/09/17

『東京ナイトメア-薬師寺涼子の怪奇事件簿』 (田中芳樹) 感想

『魔天楼』に続く「ドラよけお涼シリーズ」第2弾。権力を茶化す氏の筆の冴えはますます鋭利になっているようである。感覚的にはやはり『創竜伝』に通じるものがあると思う。読んでいてとても面白いのだけれど、作品としては作者の中では特殊な位置にあるものになるのだろうか?というのは、他のシリーズものは軸になるストーリーがあって結末に向かって進んでいることが判るし、単発作品は単発作品でその長編ごとに完結しているわけだが、これはそのどちらにも属さないような気がするのだ。よくある永劫回帰型のシリーズものになるのだろうか?キャラクターそれぞれが魅力的なので今後に期待したいと思う(1998/11/15)

2008/09/06

『創竜伝11銀月王伝奇』(田中芳樹)感想

前巻からずいぶんと間があいたけれど、めでたく11巻である。とはいえ、今回は特別編なので本編とは連続したストーリーではない。作者が実際に見た夢をバックボーンにしているというので、その点も興味深い。ただ、前巻までかなり派手なアクションシーンが展開されていたし、舞台も国際的(?)になっていたので、その続きとして読むと少々スケールダウンした感もいなめない。
まあ、とはいうものの、竜堂四兄弟はあいかわらずである。これだけ世界の、特に日本とやらいう国の政治家の無能さを虚仮にした作品シリーズもめずらしいし、思わず真顔でうなずいてしまう意見なども書いてあってよいのだ。毒舌という点では次男の続に一歩及ばないが、ぼくのごひいきは教師を表稼業にしている長兄の始である。このように生き生きした先生がたくさんいらっしゃれば、教育の荒廃とやらを嘆かずにすむと思うのだがなあ。今回は久々に学校が舞台になっているので教壇に立つシーンなど楽しめるかと思ったのだが、あっさり数行でかたづけられてしまい、その点のみちょっと不満です。(1997/12)

『晴れた空から突然に…』(田中芳樹) 感想

豪華飛行船に乗って空の旅としゃれこんだのはいいけれど、企業秘密を盗み出した犯人とそれを追う人々が乱入してきて大騒ぎ。何ページか読んで、これどっかで読んだことあるような、と思う。急いで奥付けとかを確認すると1990年ソノラマノベルとなっている、うーん、どうやら誰かに借りて読んだものだったようだ。まあ、面白いからよしとしよう。田中芳樹では『銀河英雄伝説』とか『アルスラーン戦記』とかの架空年代記の他に単発でこういうちょっとライトで面白い作品があるので要チェックですよね。『創竜伝』にしてもそうだけど、この作品中でも悪役たちは徹底的に間抜けで笑える存在です。でも、そういう思わず失笑してしまうしかないような人々が政権とか持っているんだなあ、と考えると怖い。皮肉な調子で作品中ではやりこめられているんだけど、現実世界ではこうはいかんのだろうなあ。(1997/11/16)

2008/05/25

『魔天楼 薬師寺涼子の怪奇事件簿』 (田中芳樹) 感想

なんとなく読みそびれていた一冊。『銀河英雄伝説』の文庫化もすすんでいるようなので、未読の方はこの機会にぜひ。ところで、田中芳樹の皮肉が冴え渡る作品といえば、同じ講談社の『創竜伝』ですよね。ぼくは個人的には『銀英伝』よりはこっちの方が好きでして、そういう意味ではこの『魔天楼』も同じようなトーンの話。「ドラキュラもよけて通る涼子」、略して「ドラよけお涼」の活躍、じつに楽しめました。「メフィスト」に乱入予定とのことなので、シリーズ化するんでしょうか?なお楽しみですね。苦言をひとつだけ申しあげれば、単発作品も読みたいことは読みたいのですが、やはり未完のシリーズにカタをつけていただきたいな、と存じます。富士見ファンタジアから出ていた『灼熱の竜騎兵』などはぜひ続きを読みたいのですが。ああ、全然感想になってないかも。(1997/7/13)

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