【作家】新井素子

2013/01/06

『銀婚式物語』 (新井素子) 感想

『結婚物語』、『新婚物語』の続編。正彦さん・陽子さんのその後が描かれる。というか、前作と同様に作者である新井素子氏の経験がほとんどその素材になっておるのだろうなあ。とても興味深いのは、家を建てる話である。家というよりは巨大な本棚が欲しいのだという主張に、なんともうらやましい思いがするのは、ぼくだけではあるまい。引っ越してから本の整理に2年かかったというエピソードには、同情すると同時に羨望をおぼえる。
日本テレビは、ぜひ陣内孝則・沢口靖子でスペシャルドラマ化していただきたい。ついでに、家を建てる話の時は、実際の新井家でロケを敢行していただきたいものだ。
余談だけれど、この話の主人公・陽子さんの家族の名前ってすごいよな、と今さらのように思ってみたり。名字が原、父は力、母は光子、妹は粒子だものね。きわめつけは、祖母のカク。まるで手塚治虫の某国民的アニメのようじゃありませんか。

2010/02/11

『もいちどあなたにあいたいな』 (新井素子) 感想

じつに久しぶりの新井素子の長編。7年ぶりですね。平成十四年から二十一年にかけて書かれたそうで「くらっときちゃう」と作者があとがきでコメントしてしまうほどに世に出るまでに長くかかっています。
読み始めて、素子節が健在であることに安心しながらも複雑な思いを抱いてしまいますね。物語は女子大生の澪湖・その母の陽湖・父の大介の主にみっつの視点で話が進みます。澪湖は、ごく近くに住む叔母の和(やまとばちゃん)が、娘の真帆を亡くしてから様子がおかしいことに気づく。まるで、よく知っている叔母とは別人であるような……。
ううむ。正直に言って怖ろしい。『あなたにここにいて欲しい』、『おしまいの日』、『くますけと一緒に』、『ハッピー・バースデイ』と作者のサイコものを思い返して、この物語は、そういう系統に連なるのか最後まで読んでじっくり考えてみたのだが、答えはYESでもありNOであるという、はなはだ歯切れの悪いものにならざるを得ない。初読では、物語の結論は明らかなように思ったんだけれど、冷静になるとそうでもないのか?どっちなんだ?作中に引いてあったフィニイの『盗まれた街』のように、やるべきことがはっきりしていればいいのに……。
和に子供ができにくかったのは「違うから」なのか?ほとんど記号としてしか登場しない、真帆こそが世界に和を繋ぎとめる者であったはずなのだが……。世界へのかかわり方は、女性と男性でかくも違う…というふうに、ぼくには読めてしまう。大介の視点は一般的な男性を象徴し、陽湖の視点は現代に増えている社会に出て働いているタイプの女性の視点なのだろうな。いっしょにいて、家族でいて、そしてそれぞれに異世界なのか?思えば、男性視点が和の夫ではなく、幼い頃からの彼女のヒーローであった兄なのも微妙だ。題名の「あなた」は、この大介のことですよね。幼い頃には自分を守って怪我までした<兄>にもういちど会いたい?これが世の男性に対する作者の思いを代弁しているのだとすれば、なんだか、頭を殴られたような気分になってしまう。読了して、ひどく居心地の悪い思いにとらわれてしまうのですよ。この居心地の悪さは、やっぱりぼくが男だからなんだろうか?
この本の感想は、ぜひ女性にこそ聞いてみたいものだと思うのである。

2009/05/10

『ブラック・キャットIVチェックメイト』 (新井素子) 感想

前作から9年空いての完結。心臓に負担をかけられないため走ることができない怪盗キャット、そのパートナーで虫も殺せぬ殺し屋の黒木、そしてたまたまキャットの目にとまりトリオを結成することになった不器用なすり千秋。三重苦を背負った”ブラック・キャット”だが……。完結編ということで、長らく伏線がひかれていたキャットの本当の目的をテーマに事件は展開します。帯に<伝説のピカレスク・ロマン>ってあるけど、ピカレスク……なんだろうか(笑)。あいかわらずの素子節炸裂。無理があるよなあ、などと思ってしまうところもあったりはするのですが、読んでいて楽しい。やっぱり本を読むのは楽しくなくっちゃなあ、と納得してしまう。最近の重めな新井作品もいいのですが、やっぱり原点はこっちだよな。このシリーズも第13あかねマンションの世界につながっているわけで、これが出たからにはやっぱり続きが気になるというもの。何年か前に短編を見かけたけれど、あれ以降どうなったんだろうなあ。早く本にまとまるといいです。
それにしても、せっかく最新刊が出たのだから、シリーズ全巻並べて、ついでに『星へ行く船』シリーズも並べてフェアなどやってくれればよいのに、と思ってしまうのだが。最近の中高生は新井素子読むのでしょうかね?読まないんんだとすると、それはそれで惜しいと思う。
さすがにこの年齢になって、あんなかわいい表紙の、しかもコバルト文庫を買うのにはとてもとても勇気がいるわけだけれど(笑)、長らく待っていたものなので迷わずに購入しました。いや、店員さんに怪訝な顔はされましたが(笑)。(2003/12)

2009/04/11

『ハッピー・バースディ』 (新井素子) 感想

暗い。まあ、なんとなく想像はしていたんだけれど、これほどとは。ある意味『あなたにここにいて欲しい』より、『おしまいの日』より、『チグリスとユーフラテス』より読んでいてつらいのだな。小説の書けなくなった作家の話など読むものではないなと身にしみます。すくなくても精神的に不調な人は読まないほうがよいでしょうね。
しかし、あれだな。読者のほぼすべてが思っただろうけど、作中とはいえよりにもよって新井素子が一人称の物語を評して「かなりの確率で、”下品”になる」などと言うとは。いや、まあそれはその通りなのだろうけれど、新井氏はご自分が書かれてきた物語をどのように思っていらっしゃるのかとちょっと不安になった。一人称だけれど主人公は無意味な自己主張なんてしないのでとっても上品なのよ、とは思っておられないだろうな?
いや、誤解なきように改めて言っておくが、ぼくは新井作品の一人称な自己主張が大好きである。なぜかといえば、そこには登場人物の語る本音が生々しくあらわれているからだ。妙な言い方だけれど、新井作品の地の文は作者がかなり前面に出ていて、だから作者が作品に対して施している計算が見え隠れし、時にげっそりした気分にさせられるよね。<あ。ここでは○○さん、△△だから××って思ってるのね>というのが代表例か。これなどは計算とも言えぬ作者の声でしかない。しかし、これと一人称主人公の生々しい肉声が、何というか絶妙のバランスを保っているのだな。キャラクタと作者の幸福な共存とでも言ったらよいか。このバランスを楽しめるかどうかが素子ファンであり続けられるかどうかの境界線ではないかな?
まあ、そういう意味で、この物語の主人公のひとりである<あきら>がかなりの度合いで作者新井素子を反映しているのでは?という読み方をするとけっこう面白いかもしれない。もちろん、作中人物なのだから、まるまる100%(笑)というわけではないだろうが……。なに?(笑)の意味がわからない?いや昔々そういう特集誌があったのだよ。まあ、どうでもよいだろうが。(2002/11)

2008/09/23

『チグリスとユーフラテス』 (新井素子) 感想

新井素子の最新作、しかも待望のSFである。「広義にはミステリ」という表現をじつにあちこちの読書系サイトで見かけたけれどそれは作者に対して失礼ってもんじゃありませんかね?すばらしい、しかもハード(ミステリでいうところの本格)なSFですよ。
遠い未来、惑星間殖民計画によって開発された9番目の殖民星ナインは出生率の壊滅的な事態に直面している。「最後の子供」として取り残された老女ルナは治療不可能な病気などによってコールドスリープについていた人々を起こすことにするが……。
物語はルナによって起こされた四人の女性の手記からなる。まずはルナの母親とも面識のあったマリア・D、そして最後には移民計画のキャプテンであったリュウイチの妻レイディ・アカリ。それぞれナインの歴史の要所要所を代表するような女性たちの意見を述べるという感じ。同時にたぶん女性がもっているであろういろいろな意見を集約するとこうなるのかな?などと男性であるぼくは感じる。とりわけマリア・Dの章は読んでいて息苦しいようなところもあるほどなのだけれど……。
この物語のテーマって人間が生きていくって何なんだろう?ってことですよね。あなたの人生に意味はありますか?この問いはすごくハードだぞ。四人の女性がそれに対してしている回答もまたハード。そしてその問いかけを象徴しているのだろう物語の題名が「チグリスとユーフラテス」、人類文明の起源を表す河の名を蛍につけてしまうのがとてもよい。まちがいなくSF、まちがいなく面白い。
なんだか安心したような気がする。衰退したとかいわれているようだけど、SFにはこの作品のようにまだまだとどけなければならないメッセージがあるじゃないですか。(1999/02/28)

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