【作家】高橋克彦

2009/05/10

『幻日』 (高橋克彦) 感想

・「鬼女の夢」 遠い記憶が何かのはずみに暗転するということはないか?ずっと信じていた何かのほんとうの意味を知ることになるのは幸福か不幸か?その記憶から繋がるすべてに疑義を申し立てられたような気持ちにはならないか?信じてきたことこそが真実なのだと信じたい。
・「ざくろ事件」 そう。知らなければ良かった、そう思うことがぼくにも何度もある。さて、判らないのは、他の人もそうであるのかということだ。作者の記憶にまつわる話を読んでいると、そこがいちばん疑問に感じるところなのだ。何かを忘れてしまえる人がひどくうらやましいと思ってしまう。
・「あいつ」 ほんの少し手を伸ばせば届いたはずであると後になって思うようなことがある。ほんとうに届いたのかどうか、その時にはもう論理的に判断することなどできはしない。ただただ、自分の勇気のなさ意気地のなさを悔やむことになってしまう。こういう話を読むと、そのことに忸怩たる思いがわきあがってくるのである。
・「白い炎」 自伝的連作の中にあって、この編のみが超自然的要素を含んでいるのはどうしてだろう?こういう位置づけで読むと、そこがとても不可思議なことのように思えてしまう。
・「幻日」 現実ではなく幻日。自分中心の自分に都合のよい世界。自分にとって価値あるものが他人にもそうだとうは限らない。たしかに客観的視点は大事なものなのかもしれないが、でもそれだけでも寂しいではないかと思ってしまうのだが……。
・「ぬるま湯」 幻日を抜け出して現実に、という表現にどこかひっかかりをおぼえながら読んだ最終編。これはその現実というぬるま湯から幻日に向かう物語ではないのだろうか?それとも幻日と現実がイコールになったということだろうか?このごに及んでも、好きなことだけできるのであれば幻日でもかまわないではないかと思っているぼくは、きっと間違っているのだろう。(2003/10)

2009/03/15

『星の塔』 (高橋克彦) 感想

いずれもどこかで耳にした記憶のある昔話に解釈をほどこし、新たな物語としたもの。七編。
●「寝るなの座敷」 何かを禁じられた場所というのは昔語りに数多い。見るな、開けるなといってそのものを示す。玉手箱、見るなの座敷、機を織る鶴女房。その約束は異界に人たる身をしばりつけておくためのの何かなのだろう。夏美と倭夏子、ふたりの夏の女性。前者が無邪気すぎる若さの象徴であるならば後者は……。幽けき昏さもまた夏に属するものか?
●「花嫁」 隠れ里の隠れ里たる由縁は?鬼の解釈は目新しくはないが……。山に住む鬼婆という話はよく聞くが、あれのもとになっているのはほんとうのところいったい何なのだろうか?
●「猫屋敷」 なぜ祟る動物の代表が猫なのだろうか?猫にしてみれば迷惑な話だろう……。でも、あの一種の無表情さになんだか相容れないものは感じずにはいられない。この話の結末、どうにも得心がいかないのだが。
●「星の塔」 奥深い山にある螺旋構造の古い時計台。修理を依頼された設計技師はそこで美しい娘に出会うが……。異界に魅せられた者はふたたびみたび異界に身を投じるのが常である。なぜならばその場所その時間には……。ラストシーンが逆説的で美しい。

『幻少女』 (高橋克彦) 感想

ホラー掌編集。怪奇は雰囲気で読ませるもの、と思っているので、どうも掌編にはなじまないのではないかと思う。『前世の記憶』とか『緋い記憶』のなんともいえぬ恐怖に堪能したのだけれど、あそこまでの雰囲気は望めないかと思っていた。しかし、やはり何篇かにひとつ、単なるサプライズにおわらない恐怖に不意を突かれる。ぼくとしては解決らしい解決のない「電話」のような作品がすきなのだが「大好きな姉」のほうが作者らしいし、より怖いのかもしれない、などとも思う。あと「色々な世界」で扱われているのは、ぼくがむかしとても不思議に思っていたことをすっきりと説明してくれているような気がしたのだが、途中からひねってあって唸ってしまった。現実と幻想の世界の間なんて、この程度のものなのだと思い知ることになるよね。

2008/11/30

『蒼い記憶』 (高橋克彦) 感想

記憶シリーズ第3弾。ふだんハードカバーの短編集ってのはよほどのことがないと買わないんだけど、前二作のグレードの高さゆえですね。ぼくとしては突出した作品は今回はないと感じるのですが、記憶という1テーマでこれだけのシリーズを構築できるというのはやはりすごいと思いました。
ひとつの電話番号から秘められた過去をあばく「幽かな記憶」、ラストの1行にこそ怖さを感じるのはぼくだけでしょうか?「水の記憶」はこの作品集中もっとも気に入った作品、ちょっと救われた気がしますね。例の作品をいいほうに裏返すとこうなるのかな?「嘘の記憶」はちょっとにやにやしながら読みました。同人とかやっていた人は多かれ少なかれこういうことってありませんでした?(2000.02.05)

2008/09/23

『緋い記憶』 (高橋克彦) 感想

先月読んだ『前世の記憶』が印象的だったので、シリーズの前作にあたるこの作品集も読むことにしました。これ、ほんとにすごいシリーズですね。もしまだ続けて書かれているなら、次の作品集もぜひ読みたいものです。
古い住宅地図から子供の頃に住んでいた町の記憶が次々によみがえるのに目当てにしたある家だけが見つからないという表題作もおもしろかったけれど、やはりこの作品集でもっとも怖くそして美しいのは「ねじれた記憶」でしょう。思わず何度も読み返してしまいました。そうする価値があるでしょう?例えば現代恐怖アンソロジーを組むなら必須の作品といってもよいですね。あとでカバーの解説をふと見たら直木賞の選考委員が激賞とか書いてあった。あたりまえですね、いやほんと。(1999/03/21)

『前世の記憶』 (高橋克彦) 感想

高橋克彦というと『総門谷』とか『写楽殺人事件』とかそういうイメージだったので、こういう短編集は意外だったのですが、氏の直木賞受賞はこのシリーズの前作にあたる『緋い記憶』ということなので、これはぼくの不勉強ですね。
表題作の「前世の記憶」はちょっとストレートすぎるかなという気がしましたが二番目に収録されている「針の記憶」では思わずうなってしまいました。これはいい。それと「匂いの記憶」がじつに怖くて秀逸。なまじのホラーではこの話のラストシーンにたちうちできないでしょう。思えば「記憶」だけをテーマにしてこれだけ書くというのはすごいことなのでしょうね。ぜひ『緋い記憶』も読んでみなければなりません(1999/02/28)

2006/09/07

『眠らない少女』 (高橋 克彦) 感想

4041704170眠らない少女―高橋克彦自薦短編集
高橋 克彦
角川書店 2006-08

by G-Tools

【感想】
自薦短篇集。作者の様々な面がこの一冊で楽しめる。
・「眠らない少女」 ラストがいささか強引な気もするのだが、それにしても怖ろしい。 この編のメインとなるテーマが、その後さまざまに形を変えて氏の短編にあらわれていることを考えると興味深い。
・「卒業写真」 これなどは、自分の身にも起こりそうな気がする。人の記憶の曖昧さ、不可思議さについては、高橋作品を読むたびに思い知らされる。
・「歌麿の首」 題名の通り浮世絵もの。この方面の作品が多いのだし、面白い。むしろ、ぼくのように記憶シリーズから読み始めたというほうが珍しいのか?
・「子をとろ子とろ」 怖いというよりは気持ち悪いという感じ。こういう生理的嫌悪感と精神的怖さが絶妙にまざっている。取材をもとにした、などと言われるとなおさらである。
・「星の塔」 既読。感想はここに。
・「ゆきどまり」 何度も読み返したのだが、読み返すたびに混乱した。時間的な混乱も、氏の作品に特徴的な性質だと思う。
・「ねじれた記憶」 既読。感想はここに。大好きな作品です。
・「紙の蜻蛉」 幼い少女の中に甦った江戸時代の人形師を主人公とした『ドールズ』というシリーズの一編とのこと。面白い設定である。人形師・目吉と少女・怜の落差がよい。輪廻転生もので、こういうシリーズがあるとは知らなかった。ぜひ、別の作品も読んでみたいと思う。

その他のカテゴリー

DVD | 【アニメ】その他 | 【アニメ】ブラック・ジャック | 【コミック】その他 | 【ドラマ】その他 | 【ドラマ】必殺 | 【作家】H.P.ラヴクラフト | 【作家】R・D・ウィングフィールド | 【作家】かんべむさし | 【作家】はやみねかおる | 【作家】エドガー・ライス・バロウズ | 【作家】エドモンド・ハミルトン | 【作家】グラハム・ハンコック | 【作家】コナン・ドイル | 【作家】ジョイ・フィールディング | 【作家】ジョン・ダニング | 【作家】ジーン・リューイック | 【作家】スタンリイ・エリン | 【作家】スティーブン・バクスター | 【作家】ダニエル・キイス | 【作家】テッド・チャン | 【作家】ディーン・R・クーンツ | 【作家】トマス・H・クック | 【作家】ドロシー・ギルマン | 【作家】ハンス・ベンマン | 【作家】パトリック・ジュースキント | 【作家】フィリップ・ワイリー | 【作家】ブリジット・オベール | 【作家】ペネロピー・エヴァンズ | 【作家】モーリス・ルブラン | 【作家】リチャード・プレストン | 【作家】レイモンド・チャンドラー | 【作家】レイ・ブラッドベリ | 【作家】ロス・トーマス | 【作家】ロバート・B・パーカー | 【作家】ロバート・R・マキャモン | 【作家】ロバート・ゴダード | 【作家】三上延 | 【作家】三崎亜記 | 【作家】中山市朗 | 【作家】乃南アサ | 【作家】久世光彦 | 【作家】乙一 | 【作家】乙川優三郎 | 【作家】乾くるみ | 【作家】五十嵐均 | 【作家】井上雅彦 | 【作家】井沢元彦 | 【作家】京極夏彦 | 【作家】伊坂幸太郎 | 【作家】出久根達郎 | 【作家】加納朋子 | 【作家】北原亞以子 | 【作家】北川歩実 | 【作家】北村薫 | 【作家】北野勇作 | 【作家】半村良 | 【作家】吉村達也 | 【作家】多岐川恭 | 【作家】夢枕獏 | 【作家】宇江佐真理 | 【作家】宮部みゆき | 【作家】小川洋子 | 【作家】小松左京 | 【作家】小林信彦 | 【作家】小林泰三 | 【作家】小野不由美 | 【作家】山本周五郎 | 【作家】山田正紀 | 【作家】島田荘司 | 【作家】川端裕人 | 【作家】平井和正 | 【作家】平岩弓枝 | 【作家】広瀬正 | 【作家】志水辰夫 | 【作家】恩田陸 | 【作家】新井素子 | 【作家】日下三蔵 | 【作家】明野照葉 | 【作家】木原浩勝 | 【作家】朱川湊人 | 【作家】村上龍 | 【作家】村田基 | 【作家】東野圭吾 | 【作家】松本清張 | 【作家】柴田錬三郎 | 【作家】栗本薫 | 【作家】梨木香歩 | 【作家】梶尾真治 | 【作家】森博嗣 | 【作家】横山秀夫 | 【作家】横溝正史 | 【作家】氷室冴子 | 【作家】江國香織 | 【作家】江戸川乱歩 | 【作家】池波正太郎 | 【作家】浅田次郎 | 【作家】浦賀和宏 | 【作家】清水義範 | 【作家】清涼院流水 | 【作家】澤木喬 | 【作家】瀬名秀明 | 【作家】田中芳樹 | 【作家】田島照久 | 【作家】皆川博子 | 【作家】眉村卓 | 【作家】福井晴敏 | 【作家】筒井康隆 | 【作家】篠田節子 | 【作家】米澤穂信 | 【作家】綾辻行人 | 【作家】草上仁 | 【作家】荻原浩 | 【作家】薄井ゆうじ | 【作家】藤堂志津子 | 【作家】藤木稟 | 【作家】藤本ひとみ | 【作家】藤沢周平 | 【作家】藤田宜永 | 【作家】西澤保彦 | 【作家】谷甲州 | 【作家】貫井徳郎 | 【作家】貴志裕介 | 【作家】赤木かん子 | 【作家】酒見賢一 | 【作家】野田昌宏 | 【作家】鈴木光司 | 【作家】長岡弘樹 | 【作家】阿刀田高 | 【作家】高橋克彦 | 【作家】高橋留美子 | 【作家】高田祟史 | 【作家】高田郁 | 【作家】J・K・ローリング | 【映画】その他 | 【漫画家】あだち充 | 【漫画家】グレゴリ青山 | 【漫画家】今市子 | 【漫画家】吾妻ひでお | 【漫画家】大和和紀 | 【漫画家】大和田秀樹 | 【漫画家】安彦良和 | 【漫画家】川原泉 | 【漫画家】日渡早紀 | 【漫画家】明智抄 | 【漫画家】末次由紀 | 【漫画家】杉浦日向子 | 【漫画家】村枝賢一 | 【漫画家】松本零士 | 【漫画家】柳沼行 | 【漫画家】桑田次郎 | 【漫画家】業田良家 | 【漫画家】横山光輝 | 【漫画家】水木しげる | 【漫画家】真船一雄 | 【漫画家】秋月りす | 【漫画家】荒川弘 | 【漫画家】萩原一至 | 【漫画家】藤子・F・不二雄 | 【漫画家】高屋良樹 | 【漫画家】高田裕三 | 【漫画家】魔夜峰央 | 【特撮】その他ウルトラシリーズ | 【特撮】ウルトラマンネクサス | 【特撮】ウルトラマンマックス | 【特撮】ウルトラマンメビウス | 【特撮】仮面ライダー000 | 【特撮】仮面ライダーW | 【特撮】仮面ライダーウィザード | 【特撮】仮面ライダーカブト | 【特撮】仮面ライダーディケイド | 【特撮】仮面ライダーフォーゼ | 【特撮】仮面ライダー響鬼 | 【特撮】全般 | 【特撮】生物彗星 Woo | 【読書】1996年の読書遍歴 | 【読書】1997年の読書遍歴 | 【読書】1998年の読書遍歴 | 【読書】1999年の読書遍歴 | 【読書】2000年の読書遍歴 | 【読書】2001年の読書遍歴 | 【読書】2002年の読書遍歴 | 【読書】2003年の読書遍歴 | 【読書】2004年の読書遍歴 | 【読書】2005年の読書遍歴 | 【読書】2006年の読書遍歴 | 【読書】2007年の読書遍歴 | 【読書】2008年の読書遍歴 | 【読書】2009年の読書遍歴 | 【読書】2010年の読書遍歴 | 【読書】2011年の読書遍歴 | 【読書】2012年の読書遍歴 | 【読書】作家別未分類 | アニメ・コミック | ウェブログ・ココログ関連 | ゲーム | コネタマ | パソコン・インターネット | ワーカホリックなSE生活 | 創作掌編 | 日記・コラム・つぶやき | 映画・テレビ | 書籍・雑誌 | 音楽

他のアカウント

2016年9月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  

カテゴリー

無料ブログはココログ

★★★★