【作家】貫井徳郎

2010/04/26

『愚行録』 (貫井徳郎) 感想

一家四人が惨殺される事件が起こる。その事件をめぐってのインタビューが複数の関係者に対して行われる。インタビューをすることで見えてくる、被害者夫婦の人間性……。
誰かが自分をどのように見ているかなんて判らない。どう見えていようが、その人にとってはそれが真実なんだろう。人間なんて多面的なものでしょうに。いいところもあれば、よくないところもある。それが人間だと思うのだけれど、死んでしまえば「あの人はああだった」というように、切り捨てられるのかな?人の世は、まことに誤解と曲解で成り立っていて、それが愚行を生むのであろうな。
ところで、失礼ながら読了してすぐは、そんなに衝撃的なラストだとは思わなかったのですよ。でも、ふと冒頭に戻って、新聞記事を抜き出した体裁の文を再読し、頭の中にじわじわと疑問が広がったのです。最後の兄妹の会話・・・は誰も聞いていないのか。ということは、この事件はまだ・・・。

2009/05/10

『神のふたつの貌』 (貫井徳郎) 感想

宗教的な物語というのは、やはり読んでいて辛いものがある。まずは、宗教というものにここまで真摯に向かい合ったことがないので、読み進むごとに引っかかりをおぼえてしまうのが原因であろう。主人公にうまく感情移入できないのである。いや、誤解しないでいただきたいのだが、宗教に興味がないと言っているのでもないし、宗教が嫌いだと言っているのでもない。たぶん、どちらかといえば、そういう話が自分は好きなのだろうと思う。ただ、のめりこむ気持ちが判らないのだ。いつも冷めている自分を感じる。<神の沈黙>か……。沈黙しているからといって、神がいないというわけでもないだろう?どこかで奇跡が起きたからといって、それが神の恩寵などではないのと同じことだ。そうだ。ぼくにとっては、神がいようがいなかろうが同じことなのだ。超越者に祈らないのが自分のスタンスだ。無神論などというものではない。神はいるかもしれない、またはいないかもしれない。でも、ぼくはそれには関係がない。ただ、それだけのことだ。
この物語の主人公は、自分を特別な者に考えすぎている。神の視線を感じることがそんなに重要なことなのだろうか?そうすることによって、視野狭窄に陥っているだけではないのか?いや、ぼくは自身が宗教に対していいかげんなのでそう感じるのだろうか?ここは、クリスチャンの意見をぜひに聞いてみたいが、ためらうところだ。なぜかって?それは、無限の善意に満ちた彼ら宗教者と言葉を交わしているうちに、自分がとてつもない悪者に思えてくるからなのだが……。(2004/05)

2008/11/30

『迷宮遡行』 (貫井徳郎) 感想

『烙印』の改作だということですが、未読でしたので、その比較はできません。失踪した妻を捜すうちにだんだんと知らなかった妻の姿にいきあたる、というのは、どこかで聞いたような筋ではある。ということは、妻の失踪の理由の意外性というのに物語はかかっているわけですが……。この主人公、なんというか、どうしてこんなに世間知らずなんです?どうも納得しがたい人物なのだよね。面白いキャラクタではあるのだが、ある意味無理がないかと思う次第。しかも、行動がキャラクタを裏切っているというか……。それとも、命より大事にしていた妻を失った男ってのは、こんなふうに無茶な行動をするものなんでしょうか?うーむ、話そのものは面白いのだがなあ。(2000.11.20)

『崩れる 結婚にまつわる八つの風景』 (貫井徳郎) 感想

貫井氏の短編集とはめずらしいと思って本の最後を見たら自註解説というのがあった。なるほど、初めての短編集ということらしい。人生のある側面を切り取ってみせる著者のたしかな視点にはいつも関心するところなので、短編というスタイルでそれをどのようにさばいているのか興味を持って読んだ。
「崩れる」時に狂気のきっかけはほんのささいなこと。日常のささいな歪みの積み重ねが狂気を生む。しかし、それは、別の世界への扉になっているかもしれないではないか?
「追われる」この話に出てくる男をストーカーのようなものにしてしまったのは何だろう?中途半端なやさしさなどというものは本来は必要ないものだ。しかし、ビジネスライクに徹し切れない職業というのはあるものなのかもしれない。
「誘われる」公園デビューというのも、ぼくにはよくわからない社会現象のひとつだ。ある種の閉じた人間関係を人がときに切望するのはたしかだが……。ほんとうに、何かに属さねば生きていけぬものだろうか?少なくても無理に属そうとする必要はないように思うのだが……。(2000.09.03)

『天使の屍』 (貫井徳郎) 感想

納得できる動機も見出せないままに自殺を遂げた息子の身辺を追跡調査するうちに、主人公が見出すことになる少年たちの不可解な世界とは?
うーむ、読了してもなお釈然としない。大人が立ち入ることのできない「子供の論理」に、ぼくたちもまたかつてはその身を置いていたであろうか?また、子供を持つひとりの親として、いずれそこがもはや自分には立ち入ることのできない世界であることを思い知らされる日が来るのであろうか?思えば、この物語の題名は不可思議な示唆に満ちているのではないか?<天使の屍>とはすなわち<子供の死体>であり、その意味するところは<大人>のことであるような気がしてぼくにはならない。理解できないとするのは逃げでしかないのか?いずれにせよ、彼らが子供でなくなってから理解できても手遅れなのは間違いない。
ちなみに、この文庫本の解説は、当ページにもリンクいただいているUNCHARTED SPACEのフクさんです。
(2000.06.25)

2008/10/25

『転生』 (貫井徳郎) 感想

心臓移植を受けた主人公は、食べ物の好みが変化し、知らないはずのことを知っているように感じ、そして奇妙な夢を見はじめる。自分に心臓を提供してくれたドナーの特性がなんらかの原因によってレシピエントである自分に受け継がれたのではないかと疑った彼は、夢をたよりにドナーと思われる女性をさがしはじめるが……。
心臓移植による記憶転移というのは実際に存在する現象らしい。そういえば以前にTVでそのような番組を見た記憶がある。脳死体からの臓器移植というものが話題になっている昨今、これは読んでおくべき物語だろう。もちろん、問題は記憶転移にあるのではないし、主人公が探しあてたドナーが誰なのかということも、じつは謎の一部にすぎない。その道筋を追っていくことで、主人公と読者が直面する臓器移植の持つ可能性と問題点の両面こそが最大のミステリなのだ。この物語で語られるのは、脳死体からの臓器移植に対する賛否の両極の意見なのかもしれない。(1999/07/18)

2008/09/23

『慟哭』 (貫井徳郎) 感想

世の中には面白い物語がまだまだあったものだなあ。衝撃的なまでに現代的でしかも息もつかせぬ展開。連続幼女誘拐事件の捜査の展開と並行して描かれる、ある男が新興宗教にはまっていく様子がじつに怖い。淡々とした描写がその怖さを増幅しています。デビュー作にして作者は当時25歳前後?それでこの人間描写ですか?世の中にはおそろしい作家がいるものです。これはミステリというよりは一種の社会小説ですね。そして、あの結末の1行!!衝撃的というのは誉め言葉として凡庸すぎるでしょうか?読み了えたあとに残るのは、なんだかほんとうにやりきれないような思いです。(1999/03/28)

2006/02/10

『さよならの代わりに』 (貫井 徳郎) 感想

4344009215さよならの代わりに
貫井 徳郎
幻冬舎 2006-01

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【感想】
未来から来たと名乗る美少女祐里と、主人公の和希が所属する劇団で起きた殺人事件を巡る謎。
タイムスリップものといえばSFでは定番で、ぼくとしては好きなテーマのひとつです。作者がミステリ作家なので、そのあたりがどう処理されているのかという興味を持ちながら読みました。殺人事件の謎よりも祐里がほんとうに未来からやって来たのかというところにもちろん主眼を置いて、です。結末で語られるタイムスリップの起こり方というのがなかなか面白かったですね。ネタバレ双方向な時間の動きというのは、梶尾真治の「時尼に関する覚書」を思い出しましたねネタバレおわり。思わず、電車の中でメモ帳をとりだしてタイムチャートを書いてみたりしましたよ。でも、そういう読み方をしてはいけなかったかな。もうちょっと純粋に楽しめばよかったのかもしれない。ぼくの場合、ミステリとして読んでしまうことで、かなり損をしたのだと思います。この主人公が、ちょっと頼りなくて、でも懸命で、そういうとことがもどかしいながらもとても共感できました。だから、もっと主人公に感情移入するべきでしたね。あと、欲を言えば主人公の憧れの女性智美をもう少し活躍させてほしかったです。これでは何だか微妙な上にも微妙な感じのままですよ。でも、だからこその憧れなのかも。そして、そういう和希だからこそのやさしさなのですね。「さよならの代わりに」祐里がある言葉を和希に言うのは、そのやさしさに応えたものなのでしょう。

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