【作家】宇江佐真理

2011/08/21

『彼岸花』 (宇江佐真理) 感想

短編集。「つうさんの家」「おいらのツケ」「あんがと」「彼岸花」「野紺菊」「振り向かないで」
なんというか、読後感がよろしくなかった。ハッピーエンドは世の常ではないけれど、なんとなく暗い気持になってしまったよ。どうしようもないことはどうしようもないまま、という結論が多いからかな?多いわけでもないのか?「つうさんの家」が冒頭でなかったら、もうちょっと感想が変わったかも、とも思う。唯一ほっとしたのは「あんがと」。これはコミカルで、ユーモアも明るい。

『おはぐろとんぼ』 (宇江佐真理) 感想

短編集。「ため息はつかない 薬研堀」「裾継 油堀」「おはぐろとんぼ 稲荷堀」「日向雪 源兵衛堀」「御厩河岸の向こう 夢堀」「隠善資正の娘 八丁堀」
基本的に人情物なのだが、「御厩河岸の向こう 夢堀」はちょっと味付けが違ってオカルトである。自分の前世をおぼえている勇助と、その姉の話。「人はこの世で生きるのがすべて」という姉のおゆりの考えに同意する。そのような弟を持って、そういう考えに至るところに、登場人物の健全さがあり、読後感がよい。

『晩鐘 続・泣きの銀次』 (宇江佐真理) 感想

岡っ引きから足を洗って十年、小間物屋の主となった銀次だが、かどわかし事件をきっかけに復帰することになり・・・。
あの銀次が十年経つとこういうふうになるのかと、ちょっと愕然とした。人生いろいろあるわけだけれど、これでは銀次が可哀そうな気がする。『泣きの銀次』は宇江佐作品のなかでも好きなものなので、かなり切ない気分にさせられた。まあ、そういう事情でも作らないと、続編のつくりようもないわけだが・・・。次作があるようなので、銀次がこの先どうなっていくのか続きを読みたいと思う。

2010/12/14

『十日えびす 花嵐浮世困話』 (宇江佐真理) 感想

近所づきあいというのは難しい。面白いのだが、読んでいてちょっとげんなりした気分になった。「皆んな、他人と折り合いをつけながら生きているのよ」ということだが、物語でくらいは、もうちょっとすっきりするような展開を読みたいものなのである。

2010/09/20

『夕映え』 (宇江佐真理) 感想

幕末の江戸。おでんが評判の「福助」の女将である ちあき。亭主の弘蔵はもと松前藩の武士である。職を転々とするふたりの長男 良助は武士にあこがれ、彰義隊の一員になってしまうが……。
文庫本上下巻にわたる長編。シリーズ物は別として、著者としては長いものである。宇江佐さんの得意の要素をこれでもかと詰め込んだ感じがする。詰め込んでいて、かつ長いのに、今ひとつ盛り上がりに欠けるような気もするのだな。上野の戦で良助が友の首を切るシーンとか、巻末の参考にも入っているが、やっぱり杉浦日向子の『合葬』を思い出してしまいもする。ひとつひとつのエピソードには胸を打つものがあるのに、物語の方向性が見えない。いや、その先が見えないのがあの時代そのものであるのか。「うへからは明治などと云ふけれど おさまるめいと下からは読む」 それが時代というものなのかも知れない。

2010/02/11

『ひとつ灯せ 大江戸怪奇譚』 (宇江佐真理) 感想

宇江佐真理版<百物語>。若い頃から働きづめだった平野屋清兵衛は、隠居してから急に死ぬことが怖くなった。ついには、そのため病に伏してしまう。霊感に長けた清兵衛の友人の甚助は見舞いにやってきて、清兵衛に憑いていた何者かを祓うのであった。清兵衛の気鬱を解消するために、甚助は自分が参加している<話の会>に誘う。それは、理屈では割り切れない世の中の様々な話を語り合う会であり、作り話だけはご法度であった……。
八編の連作短編になっており、毎回の不可思議な話に絡んで、清兵衛がじっさいに怪異に出会うという形になっている。が、後半にいくほどに怪異よりも話の会の参加者たちの人間関係の生々しい話が前面に出るようになってきて、せっかくの怪談なのにどうしてこんなことをするのかといぶかしみながら読んでいた。が、最後まで読んで得心がいった。要するに、語りたいのは清兵衛が死ぬことが怖くなくなるには、どうすればよいかということなのだろう。こういう境地には、年齢的にまだ至れないので、そういうものかと思うばかりなのだが……。
『新耳袋』から題材がとられているのは第四編の「守」であろう。登場人物のひとりである おはん が語る二階から落ちた時に現れる父親の手のエピソードや、「命取り」というしゃがれた声が聞こえてくるエピソードが、そうである。そもそも、「守」という題名そのものも、そうであろうと思う。

2009/10/25

『聞き屋与平 江戸夜咄草』 (宇江佐真理) 感想

与平は薬種屋の隠居である。「世の中に自分の話を聞いて貰いたい人間が思わぬほどいる」ことに気づき、店の通用口あたりで客の話をなんでも聞く「聞き屋」をはじめる。聞き料は客の気持ち次第。
吉原に売られそうになっている娘、もとは武家の出だという夜鷹、過去の罪を懺悔する髪結い、語られる話はさまざまである。さまざまであるが、概していい話はない。いい話ではないからこそ、縁もゆかりもない「聞き屋」なるものに語ることで心の重荷を減らそうということか。しかしながら、与平はただただ話を聞くばかりで、例外はあるものの解決の手立てをつけるわけではない。宗教的な救いをもたらすわけでもない。心の内を話すことで救われるものなのか?というのが、要するにこの作品のテーマなのであろう。与平自身が語ることのできぬ秘密を心の内に抱え続けていることが、物語の縦軸となっていることからも、それは明確であるように思われる。
薬種屋の日常風景を織り込みながら、きわめて抑えた感じのいいトーンで物語は進む。そうだ。読んでいる間、まるで与平の店の前でほのかな灯りに照らされているかのような、絶妙な暗さがすばらしいのだ。「聞き屋」があったら行ってみたい。そう思う人も多いのではないのだろうか?

2009/10/09

『雨を見たか 髪結い伊三次捕物余話』 (宇江佐真理) 感想

このシリーズは好きなのだが、今回はあんまり乗れなかった。話の中心が伊三次とお文から「本所無頼派」に移ってから、どうもそんな感じである。
・「薄氷」 はなから気が滅入る話である。現代の世相を映している、といえばそうなのだろうが、どうにもいたたまれない気分になる。
・「おれの話をきけ」 伊三次とお文の掛け合いとはほど遠い、これがそのあたりの男女の実情かと思うと、情けないような気もする。
・「のうぜんかずらの花咲けば」 題名は風流なのに、これも気が滅入った。
・「本日の生き方」 <上々にあらず。下々にあらず。さりとて平凡にもあらず>龍之進を中心に話が進むと、堅苦しくなっていけないような気がする。伊三次なら、そんなことをわざわざ口にはすまい。
・「雨を見たか」 <あの年頃は融通が利かない>とお文。そうそう。作者ももちろん判っていて書いているのだよね。この次の展開に期待というところ。

2009/07/05

『ひょうたん』 (宇江佐 真理) 感想

古道具屋・鳳来堂を舞台にした連作短編。
・「織部の茶碗」 <浮かれて一生が終わるんなら、これ以上のことはない>とは鳳来堂のお鈴の台詞。浮かれて過ごすには、このようによい仲間たちが必要であろう。
・「ひょうたん」 <職人は真面目がいちばんですよ>に対して話の結末がこれなのに、お鈴と同じに割り切れない。ひょうたんは無器用さの象徴か。
・「そぼろ助広」 官位の有無のほうが、実像に勝るものか。そうではなかろう。お鈴の亭主の音松の男振りが上々。この連作中いちばん好きな作品。
・「びいどろ玉簪」 <因縁なんざ、古道具屋にゃ無用の文句>といいながら、音松自身がいちばんそれを心にかけている。でも、世間には少なくないといえど、切ないというか残酷な話である。
・「招き猫」 <両手を高々と挙げている>というのは見たことないな。<お手あげ>な招き猫は実在するのかな?招き猫といえば京極夏彦に「五徳猫」というのがあったっけ。
・「貧乏徳利」 <こんな花見が一度してみたかったんだ>と音松の友人・勘助は言う。望みはそれだけなのか?たったそれだけなのか、と何度も思う。

2009/05/17

『アラミスと呼ばれた女』 (宇江佐真理) 感想

出島で働くお柳は、通詞である父親からフランス語の手ほどきを受ける。女人禁制の通詞という職業にあこがれるお柳は、後に榎本武揚と呼ばれる男との出会うのであった。

戊辰戦争前後を舞台にしたアラミスと呼ばれた男装の通詞の物語。読了して、こんなにも辛い思いがするのはどうしてだろう?お柳の榎本武揚への思いがなかなか報われないからか、それとも男装してまで通詞としての役目を通すという、その時代性にか。ちょっと息苦しい。お柳に男装させてもいいとは思うのだが、なんだか重いのであるよ。いや、重くても、報われる恋の結果とか職務の達成感とかあればよかったのではないか?あるいは、譲りに譲って生活の安堵感でもいい。だから、とりわけ、大塚とのエピソードは、得心がいかぬ。お柳に感情移入できぬ。それとも、年をとるとわかるようになるのだろうかな。「皆んな、なかったも同然」といった心持ちも。それはなんだか寂しすぎるような気がするのだよ。(2009/05/17)

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