【作家】荻原浩

2013/01/06

『さよなら、そしてこんにちは』 (荻原浩) 感想

「さよなら、そしてこんにちは」、「ビューティフルライフ」、「スーパーマンの憂鬱」、「美獣戦隊ナイトレンジャー」、「寿し辰のいちばん長い日」、「スローライフ」、「長福寺のメリークリスマス」の7編。
「スーパーマンの憂鬱」のスーパーマンは、マントを着けて空を飛ぶあれではなくて、スーパーマーケットに勤める係長の話。テレビでこうすれば健康になるという食材が紹介されるたびに右往左往するという、いやもうなんだかなあ。サラリーマンは本物のスーパーマンより激務だわな。そして、戦隊ものの俳優目当てで週末を楽しみにしているママさんを描いた「美獣戦隊ナイトレンジャー」はツボ。しかし、甘いよママさん。変身後のスーツアクターは別人だから興味ない?顔の見えない彼らのおっかけしてる女の子たちだっているのだよ(笑)。まあ、このママさんが遊園地のショーで出会ったようなひどい俳優は、実際にはいないと信じます。だいたい、ああいう現場でいちばん偉いのは、悪者の親玉役をやりながら舞台を牽引している人だったりするのです。

『ちょいな人々』 (荻原浩) 感想

「ちょいな人々」、「ガーデンウォーズ」、「占い師の悪運」、「いじめ電話相談室」、「犬猫語完全翻訳機」、「正直メール」、「くたばれ、タイガース」の7編。
動物の本音が聞こえてしまう犬猫語完全翻訳機で大笑い。なんだかなあ、と思っていたらその次の話が人間の本音がもれてしまう「正直メール」だよ。この会社、完全につぶれたのではないか、と思う。まあ、「正直メール」のラストは、さいきん同じことを考えていたので、そうだよな、と同意します。メールですべてが片づくわけじゃないのだよ。最後は、結婚の申し込みに来た虎キチの恋人と巨人が命の父親の間でふりまわされる娘を描いて、とってもいい感じの「くたばれ、タイガース」でほのぼの。

2010/09/20

『なかよし小鳩組』 (荻原浩) 感想

やっぱり荻原浩のサラリーマンもの?は面白い。つぶれかかった広告代理店に舞い込んだ仕事は、指定暴力団小鳩組のコーポレート・アイデンティティ戦略だった!
いやあ、相手がヤクザにデフォルメされているものの、これは仕事の本質を突いていると思いますよ。ありえないような設定なのに妙に共感できるのは、語られているのが本質だからなんだよね、きっと。事業本部長を名乗る妙な具合にインテリな鷺沢に「戦略なんかじゃ人の心は動かせない」と、言いたいけれど心の中で思っているだけってのが、じつに絶妙なスタンスだと思う。そして、半ばで語られるCIの目的には、思わずのけぞるよね。いや、社会って、じつはぼくが知らない所でそういうふうにまわっているんだろうな。

『千年樹』 (荻原浩) 感想

樹齢千年だという巨樹にまつわる連作。子供が一人でそばに行くと神隠しに遭うという。名づけて「子盗りの木」。そこには神社があって、神社が経営する幼稚園が。幼稚園の名は「ことり幼稚園」。うーん、ブラックユーモアだなあ。この話に、いまひとつ乗れなかったのは、「ことり幼稚園」が読んでいる間ずっと頭にひっかかっていたからだと思う。戦中と70年代を対比した「瓶詰の約束」と、祖母が戦時中に受け取ったらしい恋文に孫娘が思いを巡らせる「バァバの階段」が良かった。

2009/12/27

『四度目の氷河期』 (荻原浩) 感想

父親のいないワタルは、遺伝子研究を行う母親がかつてロシアにいた事実から、自分の父親はクロマニヨン人のミイラではないかと想像する……。
男の子が、18年かけて自分を確立させていく話である。読んでいて、途中で何度かワーとか叫び出しそうになった。なんというのだろう?かつての自分を思い出して、恥ずかしくなるのであるな。男の子には誰だって、「秘密の夏」があるんだろう。それを乗り越えなければ、大人にはなれないのだな。

2009/03/01

『押入れのちよ』 (荻原浩) 感想

・「お母さまのロシアのスープ」 ホラーにしてもほんわかしたものが多いのだろうという勝手な予測をいい意味でのっけから見事に裏切ってくれた。ほんとうに怖いのはやっぱり人間なんでしょうか?
・「コール」美雪と雄二とぼく。みんないいやつらだ。いいやつらだから哀しいな。でこぴん。
・「押入れのちよ」 表題作。会社を辞めて引っ越した築35年のアパートの押入れには明治39年生まれ14歳、花柄の赤い振袖を着た幽霊が……。なんだかね。ちよの行動を見ていると、ほんとうにみんなテダ・アパアパってことでいいんじゃないか、とか思ってしまう。いろいろあるけど、まあ、テダ・アパアパってことでさ。
・「老猫」 昔から猫は化けるものだと決まっているらしい。すべてが混沌としたままに進行する物語は、これぞ恐怖と言えるものである。
・「殺意のレシピ」 その回りくどさが、ストレートな殺意よりもむしろ怖ろしい。
・「介護の鬼」 読み終えてげっそりした気持ちになる。こういう鬼、そのうち世間にありふれるようになりはしないか?
・「予期せぬ訪問者」 ドタバタもの。上記で落ち込んだところにもってくるのがいい。
・「木下闇」 これは救いがない話だな。十五年後の「もういいよ」は悲しすぎる。
・「しんちゃんの自転車」 これがいちばん好きですね。 三年生になっても自転車に乗れない私と教えてくれるしんちゃん。「俺が教えたなんて誰にも言うなよ」「がってんしょうたくん」 私は大人になっても、その約束を守っているのですね。(2008/12)

2006/08/08

『あの日にドライブ』 (荻原 浩) 感想

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荻原 浩
光文社 2005-10-20

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【感想】
うーん。この男、とりあえずサラリーマンに向いてません(笑)。せっかく勤めていた銀行を、ちょっと上司に逆らってやめる破目になり、つなぎのつもりでタクシードライバーになる、と。人生をなめているなあ、と、そう思ってしまいます。
自分の能力はこんな会社で浪費される程度のものじゃない。どこかに別天地があるはず。なんて、まあサラリーマンだったら誰でも考えたことはあるのでしょうが、この主人公の勘違いは根深いものがあります。だいたい、辞めたところのブランドを別のところに就職してまで引きずっているあたり共感しにくいものがあります。別天地に行きたいなら、それだけのことをやらないとね。
まあ、そこのところも作者の計算ずくではあります。あるきっかけで、タクシーの運転という仕事に興味を持ち、同僚たちもそれぞれの事情をかかえているのだと知る。家族とも向き合い直す。そうそう。仕事って、向き合い方と人間関係によって、同じことをやっていても、それが楽しかったり、反対に苦しいだけだったり、妙なものです。まあ、だからラストのしかえしは、ちょっと微妙かなとは思いました。

2006/08/02

『ハードボイルド・エッグ』 (荻原 浩) 感想

【感想】
マーロウに憧れても、日本人ではさまにはならないのかもしれないな、と思う。でも、その、さまにならない部分こそが、日本人の日本人たる所以ではなかろうかな。ハードボイルドになりきれずに、ところどころに浪花節が混じるあたりが、いい匙加減です。主人公はほとんど動物探し専門になりかかっている探偵。おしかけてきた「美人」秘書は……。そして、心を癒すために立ち寄るJの店には、なぜかおでんが。
この、なりきれない部分のユーモラスさを、なぜか自分に重ねてしまうのだなあ。人生は、チャンドラーのようにはいかないけれど、それでいいんじゃなかろうか。そして、じつは、この人生のほころびみたいに思えるユーモラスな部分こそが、じつは悲哀そのものだったりする。終盤は、ちょっと寂しい感じがしたですよ。
ひとつだけ苦言を呈すれば、ハードボイルドを気取るなら、ピースライトじゃなくてゴロワーズくらいは吸ってほしいものだと思います(笑)。

2006/06/28

『噂』 (荻原 浩) 感想

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荻原 浩
新潮社 2006-02

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【感想】 新潮文庫の帯に入っている「衝撃の~」は余分だと思う。あれ、書いてない方が、よほど衝撃を受けられます。 ミリエルという香水をつけていると、女の子をさらって足首を切ってしまうという<レインマン>に襲われないという<噂>。それは販売戦略のために故意に流されたものだった、と。ところが、その<噂>の通り殺される女性が。警察は<噂>とは見当違いの捜査をしている。 いいですねえ。何より所轄の小暮がいい味出している。そして、それをサポートする本庁の女性刑事の存在が、小暮の立場を公的にも私的にも浮かび上がらせているのだよね。懸命な生き方によって、口先三寸の<噂>なんて打破される……。いい感じです。 でも。いい味出してる小暮でも、いや、いい味出している小暮だからこそ、わかっちゃいないということだ。世の中、そんなに単純じゃないし、自分に理解できることばかりでもない。そして、理解したような気になっていると、手痛い目に遭うということも。小暮はいずれ真相に気づくのだろうか?そして気づいた時にどう行動するのだろうか?ぼくは、そこにこそ興味があるのだがな。

2006/06/27

『誘拐ラプソディー』 (荻原 浩) 感想

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荻原 浩
双葉社 2004-10

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【感想】 ばかだねえ(笑)。こういうおばかな犯人が、嫌いじゃないぞ。あるのは借金と前科だけという、名前だけは立派な伊達秀吉。自殺しようとしたがうまくいかず、ほとんど行き当たりばったりで誘拐を敢行。 誘拐ものって陰湿になるような気がするのだけれど、この誘拐されたヤクザの息子の伝助が、犯人に輪をかけておばかなものだから笑える笑える。テンポよくドタバタで、映画にするといいだろうなあ、と思ってしまう。いや、子供をこれだけ阿呆に書いてしまうと映画化は難しいか?この阿呆なところがよいのになあ。 しかしあれですね。何かがうまくいっているとか、うまくいっていないとか、それって単なる幻想なのかもしれないよ。うまくいっていると思うのも、そう思わないのも半ば以上は自分の気持ちの持ち方なのだろうね。

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