【作家】伊坂幸太郎

2010/12/14

『魔王』 (伊坂幸太郎) 感想

「諸君はこの颯爽たる 諸君の未来圏から吹いて来る 透明な清潔な風を感じないのか」という宮澤賢治の言葉が作中に引いてある。宮澤賢治をファシズムと結びつけて考えてみたことは、ついぞなかったので、驚いた。私は、このブログでは政治的な事柄を語らないことにしているが、まあ読んだ本が政治絡みだと語らざるを得ないか?いや、やっぱりやめておくか。でもまあ、ひとことだけ。全員が同じ方向を向いているような状態は、それが何についてであれ、とても気持ち悪く思う。

2010/02/08

『ラッシュライフ』 (伊坂幸太郎) 感想

五つの視点で描かれた、一見無関係な物語が微妙に交錯し、進むにつれて意外な繋がりを見せるという構成。冒頭にエッシャーの騙し絵"Ascending and Descending"が掲げられている。これを物語でやろうというのである。読み進むほどに面白くなっていく。
読むほどに、なにが豊潤な人生なのか、わからなくなってきますね。少なくても、冒頭で画商が言うような「金で買えないものはない」生活ではなかろう。金があっても経験できないような、複雑にねじ曲がった人生が織り成す物語は、それを教えてくれるではないか。いろいろ経験して、「生きていること自体に驚いて、拍手をすればいい」のである。

『重力ピエロ』(伊坂幸太郎) 感想

読むのにとても精神力がいる物語でした。理由は感情移入できなかったこと。語り手の泉水の立場で読もうと当然するわけですが、彼が置かれているところが微妙にすぎて、拒否反応が出てしまうのです。頭ではわかるんだけど、感情がついていかないというか、そういう感じ。うまく言えません。
「春は俺の子だよ。俺の次男で、おまえの弟だ」という泉水と春の父の台詞は「われこそが悲劇の主人公である、と自らを哀れむ様子もなければ、自分自身を鼓舞するような響きもなかった」と語られる。だから、泉水は、春と自分が半分しか血が繋がってないことに「怯まずに」すむ。なるほど、と思うがだめなのである。ふたりの父がもう少し利己的であれば納得がいったかもしれない。あるいは、ふたりの母の生の声が入っていれば。でも、それではこの話は成立しないであろうと思う。そんなにきれいごとじゃないだろう、と反発してしまうのだ。いや、きっと、春自身がだれよりもそう感じているのだ、と思うのだが……。

『死神の精度』(伊坂幸太郎) 感想

死神の一般的イメージというと、髑髏の顔・黒いフード・大きな鎌といったところか。タロットカードのNo.13 The Deathの図案の通り。西洋風である。でも、この物語に出てくる死神は、どうも違うようだ。CDショップで試聴するのが好きで、名前はどこかの都市名、世間とは語彙の理解が少々ずれている。主人公 千葉も、だからどこかとぼけた感じだ。
情報部からのデータに基づき、不慮の何かで死ぬ予定の人間を調査し、予定の可・不可を上に報告する。作中で死神の仕事とされていることは、かなりドライである。お役所仕事といってもいい。通読しても、何が可で何が不可なのか、さっぱりわからない。千葉自身にもよくわかってないのではないか?人間の生死のわかれめは、しかし案外にこんなふうに決まっているのかもしれない、と妙に納得もしてしまう。人間の生死を1週間くらいのいいかげんな調査で決めないでくれと怒りたいのだが、どうにも死神・千葉を憎めないのだ。
神と人間はわかりあうことができないのかもしれない。たぶん、それは作中でもふれられているように、時間の感覚が違うからなのだろう。人の一生は死神に比べてとても短いと言える。最終編が、「死神対老女」なのは、だから象徴的だ。老いることのない死神が老女にかなうわけはないような、そんな気がするのである。

『終末のフール』(伊坂幸太郎) 感想

もし世界が滅びるとしたら、というのはSFではよくあるテーマである。人々は災厄に立ち向かったり、また逃亡しようとしたりする。だが、災厄をただ待っている物語というのはどうか?短編ならばあるか。「世界の滅びる夜」(平井和正)とか、「めぬけのからしじょうゆあえ」(半村良)なんていうのもそうかな。では長編では?ネビル・シュートの『渚にて』だろうか?不勉強なので、他に思い出せない。
この物語が上にあげたいくつかの話と大きく違うのは、滅びが今夜でも3日後でも1年先でもないことであろう。八年後に小惑星が衝突すると予告されてから五年が経過、という絶妙な設定。起こるべきパニックはすでに起こってしまって、それでも人々は生活している状態。秀逸だなあ、と思う。
ぼくなどは悲観的なので、これだけ時間があって、打つ手がない状態なら、人類は衝突を待たずに自滅するのでは?とまずは思ってしまう。この状況で日常は継続するのか?その答えが、この物語に込められているのだ。きれいごとじゃない、よくも悪くも日常が続く。人間ってしぶとい……まあ、そういう意味で捨てたものでもないか、とか思ってしまうのだな。もっとも好きなのは二編目の「太陽のシール」。「オセロを二組に分かれて、できる」という一文が、とても心に残った。

その他のカテゴリー

DVD | 【アニメ】その他 | 【アニメ】ブラック・ジャック | 【コミック】その他 | 【ドラマ】その他 | 【ドラマ】必殺 | 【作家】H.P.ラヴクラフト | 【作家】R・D・ウィングフィールド | 【作家】かんべむさし | 【作家】はやみねかおる | 【作家】エドガー・ライス・バロウズ | 【作家】エドモンド・ハミルトン | 【作家】グラハム・ハンコック | 【作家】コナン・ドイル | 【作家】ジョイ・フィールディング | 【作家】ジョン・ダニング | 【作家】ジーン・リューイック | 【作家】スタンリイ・エリン | 【作家】スティーブン・バクスター | 【作家】ダニエル・キイス | 【作家】テッド・チャン | 【作家】ディーン・R・クーンツ | 【作家】トマス・H・クック | 【作家】ドロシー・ギルマン | 【作家】ハンス・ベンマン | 【作家】パトリック・ジュースキント | 【作家】フィリップ・ワイリー | 【作家】ブリジット・オベール | 【作家】ペネロピー・エヴァンズ | 【作家】モーリス・ルブラン | 【作家】リチャード・プレストン | 【作家】レイモンド・チャンドラー | 【作家】レイ・ブラッドベリ | 【作家】ロス・トーマス | 【作家】ロバート・B・パーカー | 【作家】ロバート・R・マキャモン | 【作家】ロバート・ゴダード | 【作家】三上延 | 【作家】三崎亜記 | 【作家】中山市朗 | 【作家】乃南アサ | 【作家】久世光彦 | 【作家】乙一 | 【作家】乙川優三郎 | 【作家】乾くるみ | 【作家】五十嵐均 | 【作家】井上雅彦 | 【作家】井沢元彦 | 【作家】京極夏彦 | 【作家】伊坂幸太郎 | 【作家】出久根達郎 | 【作家】加納朋子 | 【作家】北原亞以子 | 【作家】北川歩実 | 【作家】北村薫 | 【作家】北野勇作 | 【作家】半村良 | 【作家】吉村達也 | 【作家】多岐川恭 | 【作家】夢枕獏 | 【作家】宇江佐真理 | 【作家】宮部みゆき | 【作家】小川洋子 | 【作家】小松左京 | 【作家】小林信彦 | 【作家】小林泰三 | 【作家】小野不由美 | 【作家】山本周五郎 | 【作家】山田正紀 | 【作家】島田荘司 | 【作家】川端裕人 | 【作家】平井和正 | 【作家】平岩弓枝 | 【作家】広瀬正 | 【作家】志水辰夫 | 【作家】恩田陸 | 【作家】新井素子 | 【作家】日下三蔵 | 【作家】明野照葉 | 【作家】木原浩勝 | 【作家】朱川湊人 | 【作家】村上龍 | 【作家】村田基 | 【作家】東野圭吾 | 【作家】松本清張 | 【作家】柴田錬三郎 | 【作家】栗本薫 | 【作家】梨木香歩 | 【作家】梶尾真治 | 【作家】森博嗣 | 【作家】横山秀夫 | 【作家】横溝正史 | 【作家】氷室冴子 | 【作家】江國香織 | 【作家】江戸川乱歩 | 【作家】池波正太郎 | 【作家】浅田次郎 | 【作家】浦賀和宏 | 【作家】清水義範 | 【作家】清涼院流水 | 【作家】澤木喬 | 【作家】瀬名秀明 | 【作家】田中芳樹 | 【作家】田島照久 | 【作家】皆川博子 | 【作家】眉村卓 | 【作家】福井晴敏 | 【作家】筒井康隆 | 【作家】篠田節子 | 【作家】米澤穂信 | 【作家】綾辻行人 | 【作家】草上仁 | 【作家】荻原浩 | 【作家】薄井ゆうじ | 【作家】藤堂志津子 | 【作家】藤木稟 | 【作家】藤本ひとみ | 【作家】藤沢周平 | 【作家】藤田宜永 | 【作家】西澤保彦 | 【作家】谷甲州 | 【作家】貫井徳郎 | 【作家】貴志裕介 | 【作家】赤木かん子 | 【作家】酒見賢一 | 【作家】野田昌宏 | 【作家】鈴木光司 | 【作家】長岡弘樹 | 【作家】阿刀田高 | 【作家】高橋克彦 | 【作家】高橋留美子 | 【作家】高田祟史 | 【作家】高田郁 | 【作家】J・K・ローリング | 【映画】その他 | 【漫画家】あだち充 | 【漫画家】グレゴリ青山 | 【漫画家】今市子 | 【漫画家】吾妻ひでお | 【漫画家】大和和紀 | 【漫画家】大和田秀樹 | 【漫画家】安彦良和 | 【漫画家】川原泉 | 【漫画家】日渡早紀 | 【漫画家】明智抄 | 【漫画家】末次由紀 | 【漫画家】杉浦日向子 | 【漫画家】村枝賢一 | 【漫画家】松本零士 | 【漫画家】柳沼行 | 【漫画家】桑田次郎 | 【漫画家】業田良家 | 【漫画家】横山光輝 | 【漫画家】水木しげる | 【漫画家】真船一雄 | 【漫画家】秋月りす | 【漫画家】荒川弘 | 【漫画家】萩原一至 | 【漫画家】藤子・F・不二雄 | 【漫画家】高屋良樹 | 【漫画家】高田裕三 | 【漫画家】魔夜峰央 | 【特撮】その他ウルトラシリーズ | 【特撮】ウルトラマンネクサス | 【特撮】ウルトラマンマックス | 【特撮】ウルトラマンメビウス | 【特撮】仮面ライダー000 | 【特撮】仮面ライダーW | 【特撮】仮面ライダーウィザード | 【特撮】仮面ライダーカブト | 【特撮】仮面ライダーディケイド | 【特撮】仮面ライダーフォーゼ | 【特撮】仮面ライダー響鬼 | 【特撮】全般 | 【特撮】生物彗星 Woo | 【読書】1996年の読書遍歴 | 【読書】1997年の読書遍歴 | 【読書】1998年の読書遍歴 | 【読書】1999年の読書遍歴 | 【読書】2000年の読書遍歴 | 【読書】2001年の読書遍歴 | 【読書】2002年の読書遍歴 | 【読書】2003年の読書遍歴 | 【読書】2004年の読書遍歴 | 【読書】2005年の読書遍歴 | 【読書】2006年の読書遍歴 | 【読書】2007年の読書遍歴 | 【読書】2008年の読書遍歴 | 【読書】2009年の読書遍歴 | 【読書】2010年の読書遍歴 | 【読書】2011年の読書遍歴 | 【読書】2012年の読書遍歴 | 【読書】作家別未分類 | アニメ・コミック | ウェブログ・ココログ関連 | ゲーム | コネタマ | パソコン・インターネット | ワーカホリックなSE生活 | 創作掌編 | 日記・コラム・つぶやき | 映画・テレビ | 書籍・雑誌 | 音楽

他のアカウント

2016年9月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  

カテゴリー

無料ブログはココログ

★★★★