【書庫の彷徨人・総合案内】
このブログは、過去に書いてきた読書感想をまとめなおしたものです。
1997年5月-1997年6月を追加しました。(2008.4.21)
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ひさしぶりの外伝、とはいえこれはたぶん「グイン・サーガ読本」に掲載されていた分ですね。ぼくは買わなかったのですけど。ストーリーとしては、本編44巻「炎のアルセイス」でシルヴィア姫救出のためゾルーディアに向かったグインのその後を描いています。ヒロイック・ファンタジー的色彩がかなり強く出ています。それにしても、シルヴィア姫がグインにもたらす運命ってどういうものなのでしょうね。売国姫シルヴィア(「七人の魔道師」)というのはいったいどういう意味なのか、グインがいったんケイロニアを見捨てるとはどういうことなのか、いまだ謎が謎を呼んでます。この巻では闇の司祭グラチウスが古代帝国カナンについての今までよりちょっとだけ詳しい情報を漏らしていて興味深いです。(1997/6/29)
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題名の通り、京極夏彦版の「四谷怪談」です。どれほど怪奇な世界が展開するのだろうと期待して読みはじめたのですが、これいわゆるふつうの意味の怪談じゃないですよね。むしろ、人間の心に潜む闇について描いた、怪談より怖い物語です。物語冒頭で伊右衛門が蚊帳越しに見ている情景というのがたまらなく怖い。自分の存在が不確かになってしまうかのような、存在論的な怖さなのです。それに、「四谷怪談」というとぼくは鶴屋南北のものしか知らないのですが、京極版のような解釈をしてあるものって他にもあるのでしょうか?奇妙な違和感を感じながら読み進めていくと、たまらなく怖くなっていくのです。いえ、怪奇現象ではなく、人間というものが。人間というのはここまですれ違うことができるものなのでしょうか?あまりにも悲惨な物語展開は、まるで「浅茅ケ宿」のようなラストシーンに至るまで、息をするのも忘れてしまいそうになります。(1997/6/22)
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突然時代ものを読みたくなったのである。で、書店の棚を見渡していたところ目にとまった一冊。「神隠し」というと山岸涼子の短編漫画にそういうのがありましたよね。じつに怖い漫画だったです。まあ、そういうものを期待したわけではないのですが、ミステリ色が多少は濃いかなと思って購入いたしました。で、どうだったかというと、きっとぼくはこれらの短編に描かれる人生の悲哀に納得できるようになるには少々若すぎるのかもしれない、と思いました。どうにもやりきれないようなラストが目立つのですよ。「小鶴」という短編がいちばん気に入ったのですけど、これも何だか暗い結末ですよね。同じような展開の山本周五郎の「あの木戸を通って」(という題だったと思う)なんかの方が救いがあって納得できるです、例えそれが現実的ではなくても。ぼくはまだまだアオイのでしょうか?もう少し時間をおいてから再読してみようかと思います。(1997/6/22)
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遭難したダイビング仲間の遺体の捜索をその恋人から頼まれて、奥多摩の地底湖に潜った主人公は、そこで不思議な生物と遭遇する。どうやらその場所に閉じ込められたまま独自の進化(いや変異、特殊化か)を遂げた哺乳類であるらしい。うーむ、じつに魅力的な設定ですね。サスペンス・ファンタジーと銘打ってありますけど、どうだろう。ぼくはハードボイルドだと思って楽しんだんだけど。「地球にやさしい」というぼくはあまり好きじゃない文句があるんだけど、この物語を読んでいると、いったい自然て何なんだろうと考えさせられてしまう。人間のあがきなんてじつにちっぽけなものにすぎないですよね。「地球にやさしい」ってのは、どうにも人間中心的なんだな。人間だって地球の一部なんだから、自然と人間を対極のところに位置づけるのはどうかと思う。こういうすばらしい物語を読んで、自分というものの位置を改めて考えてみるのはよいことではないでしょうか。(1997/6/22)
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宮部みゆきってこのような作品も書くんだな、とちょっと意外な気がしました。まず、設定がチェイスものであるっていうこと。もうひとつは銃が報復の象徴として選ばれていることです。いつもよりアクション的要素が強いような気がします(もっともこれは1992年の作品ですが)。それにしても、この物語の登場人物たちってみんな何か哀しいですよね。ほんの少しだけ何かが足りない。ふつうの人ならふつうに持っている何か。それを登場人物たちはいろいろな理由で無くしてしまっているのですね。佐倉修治が追いつめたのはきっとその何かです。捕まえることができたのでしょうか?理解することができたのでしょうか?何だかちょっと後味の悪い幕切れだったと思います。(1997/6/15)
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第1次世界大戦を背景に、とある貴族の館を舞台にした、複雑怪奇な人間模様の物語。本の帯にゴシック・ミステリーとあるけどちょっとちがう。70歳になった女主人公が当時を振り返りながら娘に自分の人生を語って聞かせるという趣向で、ふつうに言う意味ではミステリ色はそんなに強くないとぼくは思う。むしろ、この人間関係、いや息が詰まってしまいそうなくらいに複雑ですね。殺人事件の犯人なんてどうでもよくて、人間関係の縦糸横糸をどのように解きほぐすかですね。途中でだいたいの筋立てが見えてしまったんだけど、それでも面白い。8月には新刊『碧空の彼方へ』(仮題)が出版されるそうなので、今から楽しみです。(1997/6/15)
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時の流れにかかわる物語というのは、せつないものが多い。この作品もそうだ。それは、きっと取り返せる筈のないものを取り返そうとする試みだからなんだろう。地下鉄の駅の階段をあがっていくと、そこにあるのは違う時代の街並み。今なら自殺した兄を助けることができるのではないかと急ぐ主人公。電話をかけるともとの時代につながるというのがいい。主人公は母親にどうしたらよいのかと相談する。このシーンでは時というもの自体について深く考えこんでしまった。「過去はいつでもここにある、手には触れられないだけで」そう言った人は誰だったろう?それにしても、電話というのは何となく時間という概念を超えたところで人と人を結びつけているような気がする。この箇所を読んだとき、福島正美の「過去への電話」というフィニイっぽい短編を思い出してしまった。また、パラドクシカルなラストシーンには思わず目頭が熱くなってしまった。時の流れ、それはきっと人々の心の流れそのものなのでしょう。(1997/6/15)
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一般の調査などは行わずに、ふだんはアルバイトで生計を立てている名探偵という設定。これ自体はけっこう面白いと思うんだけど、収録されているみっつの事件にその名探偵が必要かというとちょっと疑問です。必要ないということを登場人物であるところの巫(かんなぎ)弓彦本人が自覚しているところがなお厄介かも。ミステリとしてはちょっと平凡でしょうか。いや、最初に読んだ<円紫さんとあたし>の印象が強烈だったので、そう感じるのかも。いちばん不満だったのは記録者としての主人公の女の子がこれらの事件から何を得たのかということが明確じゃないことです。(1997/6/15)
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植物をテーマにしたミステリ、4編の連作短編集でタイトルにはすべて和歌があしらってある。主人公は大学の植物学科で助手を勤めていて、専門は分類学、ヴァイオリンを趣味としてアマチュアのオケに所属しているという設定。テーマになっている植物は何も特別なものではなく、日常でぼくたちも目にしているにちがいないものが多い。一読しての印象はなんだか茫洋とした小説だなあということである。この茫洋としたところが気持ちよい。ただ、日常において何かしら異常な事件が起きてそれを解決していく過程に、何となく納得いかないところもある。ほんとうにそういうことになるのかな?と疑問に思ってしまうのだ。飛躍しすぎる部分があって、しばしばついていけなくなりもした。理系大学の生活風景スケッチとして読んで良。浮世離れしている感はあるけれど、不思議に気持ちよいのです。(1997/6/8)
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どうやら、奇数月は『月光魔術團』、偶数月は『地球樹の女神』という出版ペースにするような感じですね。毎月平井作品を読めるというのはまことに極楽であります。さて、第8巻に至ってけっこうテーマが見えてきたかな、と感じています。『梁塵秘抄』もついに本文中に出てきましたしね。『ウルフガイ・シリーズ・犬神明』においてウルフが掴み取った生きていくための指標をやっぱりこの作品も受け継いでいるのですよね。世界が同じなのかどうかはわからないけれど、ウルフのテーマはやっぱり「一をもって貫く」なのだとぼくは思うのですが。(1997/5/31)
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昔別れた恋人の記憶を取り戻すために「幻の家」を訪れる、これはきわめてファンタージッシュな設定ですよね。そして『パラレルワールド・ラブストーリー』を読んだ時にも感じたんだけど、このような記憶にまつわる物語は自分というもののアイデンティティを極めて不安にさせるものですね。この不安こそがミステリとしての最大のスパイスになっているのではないでしょうか。それと、変な言い方なんだけど、長編小説を読んだという気はあまりしてなくて、よくできた短編ミステリを読んだような気分なのですよ。決して短いわけではないんだけど。解説で黒川博行さんが触れているように「登場人物は私と沙也加のふたりだけ」の「一幕劇」なのがその原因だと思う。スピーディーで小気味よい秀作です。(1997/5/31)
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シャーロキアンってすごい。このような仕事を見るとそう思ってしまう。ホームズ物って事件の発生日時とか背景がけっこういいかげんに書いてあるのは周知のことだと思うけど、これがまたファン諸氏にはたまらん所なのかも。ホームズを実在の人物としてしまって現実にあてはめるというけっこう膨大な作業が、この探偵の登場した時から倦むことなく続けられてきたわけだけれど、それもここに極まったか?何しろ、これはホームズ物を事件の発生順に編集した画期的な試みなのですから。第1巻にはプロローグとしてかなり長い論文を掲載。これがまた読ませる。ホームズはすべて読んだという方もこの第1巻だけは読む価値ありだと思うな。世界でいちばん有名な探偵ホームズ、国会議事堂の所在地番は言えなくても彼の住所ベーカー街221Bなら知っているという方も多いのではありませんかな?(1997/5/31)
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グイン・サーガ隔月刊計画はどうやら順調に進んでいるようである。このエピソードってイシュトバーンがゴーラ王になるまで続くんだろうか。いったいグインの本編復帰はいつ?ともかく、前巻の感想でも書いたように、イシュトヴァーンがメインで動いている時は、やたらに元気。ほとんど全編を通して戦闘シーンなんだけど、飽きさせないですよね。(1997/5/31)
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連作短編がひとつの長編を構成している。輪舞形式っていうのか。構成も変わっているけど、もっと変わっているのは各短編の語り手がその主人公の財布であるという点。財布の視点から見た殺人事件っていうのはけっこう面白いぞ。長編としてのつながりよりも、むしろ各短編がとても味があってよかった。特にすばらしかったのは「旧友の財布」です。何だかやりきれない気分になってしまいました。で、小説ながら、この犯人は絶対許せんと思ってしまいました。ぼくにしてはめずらしいことですが。この本はぜひに読むべし。(1997/5/25)
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奇妙な味の短編集。借金してでも宝石を集めることをやめられない女性の悲劇を描いた「魅惑の輝き」、自分の肉体を鍛えることに取り憑かれた男の話「彫刻する人」など5編。どこにでもいるような人々を主人公にしているだけに怖い。読みはじめた時は、そうだよなこんな人いるよなとか笑っているのですが、読み進むにつれて顔がひきつってくるのが分かる。絶品なのは第3編の「忘れ物」。そこに仕掛けられたトリックもよいし、ストーリーもよい。でも、読了してからちょっと粛然としてしまったです。怖いというよりは悲しい物語ですよね、これって。女性読者諸氏の感想やいかに?(1997/5/25)
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急に硬派な本が出てきて驚かれた方もいらっしゃるでしょうが、日記にも書いたようにこれは訳者のひとりでいらっしゃるぼくの先輩からいただいた本です。内容は、もと東ドイツの共産党独裁体制の腐敗について、社会主義統一党書記長ホーネッカーを中心に暴いていくというものです。これを読んで思うのは、やっぱりマルクス・レーニン主義は人間の自然の感情を撓めたものじゃないかなあ、ということです。機械的にすぎるといった方がいいのか。何事も程度問題なんじゃなかろうか。だいたいにして、利潤を追求することを目的とはしない社会システムを取り入れた国家で、こんな不平等や不正があるようでは暗澹とした気分にならざるを得ませんね。かといってコンピュータに政治をさせるわけにもいかないし。『エレホン』みたいになったら洒落になりませんものね。(1997/5/25)
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前から欲しい欲しいと思っていたんだけど、ハードカヴァー版の1巻が見つからずそのままになっていたもの。このたびめでたく全巻文庫化の運びとなりました。やれ嬉しいな。それにしても文庫本が900円もするなんて....
まあ、それはさておき、現代ドイツ・ファンタジーの傑作です、本書は。エンデの『モモ』とか好きな方にはぜひおすすめ。主人公「聞き耳」が不思議な力を持つ石を入手し、その謎を求めて旅に出るんだけど、かなりつらい場面なんかもあって辛口。かなり変わった冒険物語であり、途中で知り合った人々から聞かされる形で挿入される話中話も謎解きのヒントになっている。この第一部の完結部分などというのはじつに落涙物です。思春期の青少年にぜひぜひ読んでほしいなあ。『モモ』というより『果てしない物語』の方にテイストは似ているかな。とにかくすばらしい物語です。(1997/5/11)
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徳間書店から出版されている清水義範の本はすべてレベルが高いなあ。かなり笑える。特にぼくが気に入ったのは「マイルド・ライト・スペシャル」。気に入りの銘柄の煙草が自動販売機に入っていないっていう話なんだけど、みなさん経験あり?ぼくが日常会社で吸っているのは“ピース・ミディアム”なんだけど、まさにこの状態。あれだけ宣伝しておいて、今はキオスクにさえ置いてない。うーん、この話のモデルは“ピース・ミディアム”なのか、それとも“マイルド・セブンFK”か。あと、興味深いのは「ねぶこもち艶笑譚」。清水義範にしてはめずらしく下ネタ風でもあることもだけど、これを読むとどうしても半村良の民話風の話を思いださずにはいられない。「庄内民話考」とか「能登怪異譚」とかね。やっぱりこれは師匠半村良のパスティーシュなのかなあ。初刊本あとがきも笑ってしまったぞ。"「きぼこおたく」は幻妙で客体化された物語である"んだそうだ。(2007/5/11)
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この作品じつは初読ではない。以前に何巻かは読んでいるのです。そうそう、角川書店で刊行されたところまでね。例の事件が起こって徳間書店で刊行されはじめたところから未読であります。じつにタイミングが悪いというか、その頃ちょうど就職いたしましてなれぬ東京の空の下、貧乏生活にあえいでおったのですよ。大阪に帰還してから買い揃えようかとしたところ平井和正全集刊行がはじまり、だったらこれで揃えようと思ったのが間違い。この全集はどうやら途中までしか刊行されなかったようで。
未読の平井作品は数えるほどしかなくて、これはそのひとつ。
とにかく、「ラスト・ハルマゲドン・ストーリー」でいざなみ、いざなぎ神話にかかわる作品です。泉谷あゆみのコミック版「クリスタル・チャイルド」を並録していくという異例のスタイルをとっておりますが、徳間書店版を加筆修正した決定版だそうですので、持っていらっしゃらない方はぜひ買い揃えましょう。それにしても、平井和正全集をどこかの出版社で出してくれないかなあ。コミックなんかもすべてサポートしてくれるとなお嬉しいのだが。「超犬リープ」とか「デスハンター」とか持ってないもので。(1997.5.5)
ASPECT NOVELSのものも完結しなかった。未だ途中までしか読んでない。縁がないのか。(2008.4.16)
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