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『むかし僕が死んだ家』(東野圭吾)感想

昔別れた恋人の記憶を取り戻すために「幻の家」を訪れる、これはきわめてファンタージッシュな設定ですよね。そして『パラレルワールド・ラブストーリー』を読んだ時にも感じたんだけど、このような記憶にまつわる物語は自分というもののアイデンティティを極めて不安にさせるものですね。この不安こそがミステリとしての最大のスパイスになっているのではないでしょうか。それと、変な言い方なんだけど、長編小説を読んだという気はあまりしてなくて、よくできた短編ミステリを読んだような気分なのですよ。決して短いわけではないんだけど。解説で黒川博行さんが触れているように「登場人物は私と沙也加のふたりだけ」の「一幕劇」なのがその原因だと思う。スピーディーで小気味よい秀作です。(1997/5/31)


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