『腐りゆく天使』 (夢枕獏) 感想
教会の香部屋になぜか浮かんだ一体の天使……それは神父にしか見ることができない幻影なのか?なんだか凄惨なイメージの作品だなあ、と思って帯をながめておりました。しかも、登場人物にはあの荻原朔太郎がいるらしい。そして、冒頭の一文「この七年間もの間、わたしが考えつづけていたのは、いったい、誰がわたしをここに埋めたのかということだ」を目にしてぶっとんでしまった。これは「頭の中の湿った土」ではないか?
同じ物語なのか、そうではないのか?朔太郎、神父、腐っていく天使、そして頭の中の湿った土……。もはや頁を繰る手ももどかしいのである。ああ、何と病的で、何と美しくて、何と切ない物語なのでしょう?こんな物語があってよいのでしょうか?読んでいる最中にいったい何度胸苦しい思いにみまわれたかわかりません。はじめ、あまやかな腐臭をはなっていた天使がだんだんとほんとうの腐乱した何かに変化していく。それは、あたかも天上に属すると自らを欺いてきた愛情がじつは世俗のものにすぎないと見せつけられるようなものではありませんか?心はどこに向かいますか?そして肉体はどこに向かいますか?詩の中にあるのは、そして残るのは何ですか?(2000.11.20)
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