『むかし僕が死んだ家』(東野圭吾)感想

昔別れた恋人の記憶を取り戻すために「幻の家」を訪れる、これはきわめてファンタージッシュな設定ですよね。そして『パラレルワールド・ラブストーリー』を読んだ時にも感じたんだけど、このような記憶にまつわる物語は自分というもののアイデンティティを極めて不安にさせるものですね。この不安こそがミステリとしての最大のスパイスになっているのではないでしょうか。それと、変な言い方なんだけど、長編小説を読んだという気はあまりしてなくて、よくできた短編ミステリを読んだような気分なのですよ。決して短いわけではないんだけど。解説で黒川博行さんが触れているように「登場人物は私と沙也加のふたりだけ」の「一幕劇」なのがその原因だと思う。スピーディーで小気味よい秀作です。(1997/5/31)


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『パラレルワールド・ラブストーリー』(東野圭吾) 感想

オープニングがよい。すれ違う電車、その窓越しにしか出会えない女性。うーむ、こういうシチュエーションはとても好きですね。それにしても、こういうミステリとしてもSFとしても、はたまた恋愛小説としても秀逸な作品っていうのは泣いてしまうなあ。物語にはこうあってほしい。
仮想現実を研究している青年が、自分の恋人がじつは親友の恋人ではなかったかという「記憶」を思い出していく過程の描写はせつなすぎるぞ。新書版としてはちょっと高い980円(3月16日現在)だけれど、ぜひ読むべし。
ちょっとだけ不満なことがあるとしたら、麻由子というヒロインの心理描写にもうちょっと深みがあってもよかったんじゃないかと。その分男性読者にとってはとくに、ミステリアスというか謎めいたラストシーンになっているんだけどね。(1997.3.16)

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