『スナーク狩り』(宮部みゆき)感想

宮部みゆきってこのような作品も書くんだな、とちょっと意外な気がしました。まず、設定がチェイスものであるっていうこと。もうひとつは銃が報復の象徴として選ばれていることです。いつもよりアクション的要素が強いような気がします(もっともこれは1992年の作品ですが)。それにしても、この物語の登場人物たちってみんな何か哀しいですよね。ほんの少しだけ何かが足りない。ふつうの人ならふつうに持っている何か。それを登場人物たちはいろいろな理由で無くしてしまっているのですね。佐倉修治が追いつめたのはきっとその何かです。捕まえることができたのでしょうか?理解することができたのでしょうか?何だかちょっと後味の悪い幕切れだったと思います。(1997/6/15)

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『長い長い殺人』(宮部みゆき) 感想

連作短編がひとつの長編を構成している。輪舞形式っていうのか。構成も変わっているけど、もっと変わっているのは各短編の語り手がその主人公の財布であるという点。財布の視点から見た殺人事件っていうのはけっこう面白いぞ。長編としてのつながりよりも、むしろ各短編がとても味があってよかった。特にすばらしかったのは「旧友の財布」です。何だかやりきれない気分になってしまいました。で、小説ながら、この犯人は絶対許せんと思ってしまいました。ぼくにしてはめずらしいことですが。この本はぜひに読むべし。(1997/5/25)


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『初ものがたり』 (宮部みゆき) 感想

「本所深川ふしぎ草子」「かまいたち」に続いて時代物の文庫化としては第三弾。季節の食べ物、それも「初もの」を主題に織り成す江戸人情捕物帖の連作短編集。「本所深川」では名脇役を勤めた岡っ引きの茂七親分が主役を張っているのも嬉しい。連作の縦軸になっているのは、何やらいわくのありそうな稲荷寿司屋の屋台の親父との会話で、ここで供される江戸庶民の食べ物の数々がじつにうまそうである。巻頭の作者の言葉に「目に青葉」の句が引いてあったりするのもよいなあ。あまりにうまそうなので、思わず池波正太郎の「仕掛人・藤枝梅安」を何冊か読み返してしまったではないか。「本所深川」の解説で池上冬樹氏が「初ものがたり」にふれて「鬼平のパスティーシュを書かせたら面白いだろうなあ、と思わせるほど」と書いておられるけれど、まったくその通り。(1997.3.9)


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『淋しい狩人』 (宮部 みゆき) 感想

そうそう、ぼくが好きなのはこういう小説なんですよ。いいなあ。やっぱりハードカバーで未読のを全部買おうかなあ。このような迷いを僕の心に引き起こしてくれる少数の作家のおひとりです。下町にある古書店という設定、主人公が老人と少年という点、そして連作短編だというのが何よりうれしい。やたらに長い小説が増えてさ、こうピリッとした短編が読みたいと思われたことありませんか。そんなあなたにお薦めです。とくに最後から二番目の「歪んだ鏡」が絶品。小道具に山本周五郎の『赤髭診療譚』が使ってあったりして。そういえば『火車』は周五郎賞をとったんだっけ、とか考えてにやにやしたり。『樅の木は残った』は未読だったなとか、『正雪記』といえば平井和正は『幻魔大戦』の続きは書かないのかなとか、乱読者の妄想はとどまるところを知らないのでありました。

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『蒲生邸事件』 (宮部 みゆき) 感想

2.26事件を背景にした謎の密室殺人を追う。主人公が予備校受験直前の「現代の」浪人生という取り合わせも○。宮部みゆきの作品というとどれもそうだけれど、読後に何だかやさしい気分になれるところがよいです。タイムトラベルという道具を介在させることによって現代人と過去の人々との意識差を描き出そうとした作品は数多いけれど、歴史にはまったく疎い少年をもってきたのは面白んじゃないか思う。(1996.11)

2005年にタイムトラベルSF日本編なんていう文を書いているけれど、これを入れるのを忘れておったですね。(2007.2.18)

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『今夜は眠れない』 (宮部 みゆき) 感想

これは92年の作品の新書化です。未読の宮部みゆきの作品ってあと何々だろうと考えるとちょっとうれしい。すべての本をハードカバーで買うわけにはいかないもんね。5億円の遺産が母親の過去の知り合いから突然ころがりこむ一家の物語。主人公は中学生の少年であります。少年を主人公にするとき宮部みゆきの筆はいちばん冴え渡るのじゃないでしょうか。(1996.11)

10年ほど前に新書で読んだこの本を、<青い鳥文庫>のルビつきとはいえ今では自分の子供が読んでいるということに、時間の流れを感じます。(2007.02.18追記)

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