『嗤う伊右衛門』(京極夏彦) 感想

題名の通り、京極夏彦版の「四谷怪談」です。どれほど怪奇な世界が展開するのだろうと期待して読みはじめたのですが、これいわゆるふつうの意味の怪談じゃないですよね。むしろ、人間の心に潜む闇について描いた、怪談より怖い物語です。物語冒頭で伊右衛門が蚊帳越しに見ている情景というのがたまらなく怖い。自分の存在が不確かになってしまうかのような、存在論的な怖さなのです。それに、「四谷怪談」というとぼくは鶴屋南北のものしか知らないのですが、京極版のような解釈をしてあるものって他にもあるのでしょうか?奇妙な違和感を感じながら読み進めていくと、たまらなく怖くなっていくのです。いえ、怪奇現象ではなく、人間というものが。人間というのはここまですれ違うことができるものなのでしょうか?あまりにも悲惨な物語展開は、まるで「浅茅ケ宿」のようなラストシーンに至るまで、息をするのも忘れてしまいそうになります。(1997/6/22)

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『絡新婦の理(じょろうぐものことわり)』 (京極 夏彦) 感想

表稼業は古本屋、裏稼業は陰陽師という京極堂を探偵役に据えてのシリーズも早くも5冊目である。最初の作品「姑獲鳥(うぶめ)の夏」を読んだとき、その設定の特異さから絶対に単発作品だと信じて疑わなかったのだけれど。シリーズ2巻目が出版されたときには狂喜したものです。毎回作品名に入っている妖怪の名前の通りの妖魅あふれる事件の展開、今回も京極夏彦はやってくれました。一点だけ不満があるとすれば、物語の展開上、ぼくの御贔屓の作家の関口(このシリーズのワトソン役)の活躍がほとんどなかったことでしょうか。ぶあつさに戸惑って購入していない人がいるのなら、すぐに書店に走るべし。
ぶあついといえば、本屋のレジの方がいやにニコニコして「この本500グラムもありますよ」とのたまわったのですが、その日に「森博嗣の浮遊工作室」のホームページをみていたら、「620グラム」とあるではないか!!結局、自分でも計量いたしました。620グラムが正解。本屋の店員さんがサバを読んだ理由はいまだに不明です。(1996.11)

重さを量ってみたというところに、当時感じたインパクトの大きさ汲み取っていただきたい(笑)。というわけで、今では分冊版なんてのもありますが、書影は文庫版の分冊でないほうをあげておきましょう。(2007.2.18)

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